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聖路加病院「チャプレン」から性的被害 
元患者女性が民事訴訟提起

西村仁美|2020年11月26日6:52PM

11月2日の記者会見で自らの被害について語る原告の女性Aさん。(撮影/西村仁美)

キリスト教「日本聖公会」系の聖路加国際病院(東京都中央区)で、患者のケアを行なう専任牧師「チャプレン」のS氏により院内で性的被害を受けたとして、当時同病院に通院していた患者の女性Aさんが民事訴訟を提起した。S氏と同病院事業主体である聖路加国際大学(糸魚川順理事長)の2者を相手取り、約1160万円の損害賠償を求めて東京地裁に11月1日付で提訴。翌日には東京都内でAさんと代理人弁護士らによる報告会見が行なわれた。

「全人的医療」を理念とする同病院にはチャプレンが複数名おり、スピリチュアル・ケアを専門職としつつ病や怪我に苦しむ患者や家族の心のケアに当たっている。代理人の1人である岩井信弁護士は会見で「難病の苦しみを和らげる役割の牧師が、患者の信頼を逆手にとり、女性患者である原告の尊厳を深く傷つけた事案」と主張。今後の裁判ではS氏の責任や、同大学の使用者責任などを追及していくと訴えた。

会見で公表された訴えによると、難病を抱えるAさんは最先端の治療を求めて2016年12月頃に同病院へ転院。事件は17年の春先から受け始めた、S氏によるスピリチュアル・ケアの中で起きた。院内の牧師控室で病に関する不安事などを相談したAさんは、「肩が凝っている」とS氏にマッサージを求められた。違和感を持ちつつ渋々応じるうち性的被害に遭い、その件を問い質したい気持ちなどから院内の別室で再度面会した際には、S氏に抱きつかれ胸を触られるなど、さらに深刻な性的被害も受けたという。Aさんはいずれも直後に友人の弁護士や性暴力救援センター・東京(SARC東京)に相談したが信じてもらえず、18年1月には築地警察署に相談し、被害申告を行なった。しかしS氏は警察により書類送検されたものの、最終的に東京地検は嫌疑不十分でS氏を不起訴処分とした。警察ジャーナリストで「警察見張番・愛媛」代表の仙波敏郎さんは「不起訴処分には4種類あり、『嫌疑不十分』は『嫌疑なし』とは違う」として、次のように説明する。

「民事訴訟では十分堪え得る結果。警察は被害があったから捜査を行ない、容疑があったから検察庁に送り、最終的に検察官の判断を仰いだ。しかし検察官は裁判所に起訴するなら99・7%の有罪率を確保したい。だから十分な証拠がないものは不起訴にしたいのです」

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