セブン東大阪「時短訴訟」
本部側が元店主を“人格攻撃”
村上恭介|2020年9月9日5:01PM
人手不足のため深夜営業を中止した大阪府東大阪市内のコンビニ店の元オーナーの男性に対し、セブン-イレブン・ジャパン(永松文彦社長=東京)が店舗明け渡しを求める一方、元オーナーは店主としての地位確認などを求めた裁判の第1回口頭弁論が8月14日、大阪地裁で開かれ、双方が全面対決する主張を展開した。
男性はセブン-イレブン東大阪南上小阪店のオーナーだった松本実敏さん(58歳)。開業から6年余り後の2018年5月、一緒に店を支えた妻をがんで亡くしたうえ、アルバイトの半数以上が相次ぎ辞めるなど人手不足が深刻化。昨年2月以降、午前1時から6時までの深夜営業を中止した。
これに対し、セブン-イレブン・ジャパン本部はフランチャイズ(FC)契約の解除と1700万円の違約金支払いを通告したが、松本さんが24時間年中無休営業の過酷さをマスコミに訴えると、世論の批判を恐れたのか、これを撤回。しかし昨年10月、松本さんが元日休業を表明すると12月末になって「顧客からのクレームが異常に多い」などを理由にFC契約の解除を通告、納品を停止して閉店に追い込んだ。松本さんは「一方的な契約解除は時短営業への報復であり、本部の優越的地位の濫用だ」として今年2月、契約の解除無効などを求めて提訴した。
この日、意見陳述に立った松本さんは「私が一日22時間のシフトに立っても店は回らず、このままでは過労死するしかないと思い、やむなく深夜営業を中止した」と述べ、「24時間営業を強制するFC契約によって、コンビニオーナーと家族は命の危険にさらされている。しかし、命より大切な契約書などない」と力説した。
セブン-イレブン側の代理人は「マスコミなどを利用した被告(松本さん)による虚偽の情報の広がりを阻止し、セブン-イレブンの企業イメージとブランド力を守り抜く」と宣言し、「顧客への一方的な暴力、暴言など被告への苦情は約7年間で326件に上り、本部の是正・改善要請にも応じなかったのが契約解除の理由。24時間営業中止への意趣返しではない」と反論。人格攻撃に終始した。
閉廷後の会見で松本さんは「利用客に一方的に暴力をふるうオーナーがどこの世界にいるのか。24時間営業の是非が争点にならないよう、本部は私を攻撃する主張しかできないのだろう」と語った。セブン本部広報は「契約解除の有効性は引き続き裁判の中で主張、立証する」と筆者の取材に答えた。