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COVID-19影響下で妊娠の不安増
緊急避妊薬の入手に課題

宮本有紀|2020年7月17日9:07PM

新型コロナウイルス感染症対策に伴う外出自粛の影響による女性や子どもへの暴力急増が、世界各国で指摘されている。意図しない妊娠の不安も増加しているとして「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」は6月17日、女性や子どもの健康を守るための課題・施策を考える勉強会を衆議院第一議員会館で実施した。

「日本では小学校・中学校段階では避妊や性交について教えないが、妊娠・避妊についての科学的に正確な知識を得る機会や、心配な時に相談できる若者向けのサービスの拡充が求められる」などと話す染矢明日香氏。(撮影/宮本有紀)

SNSやネットで妊娠や避妊、性感染症などの相談を受けているNPO法人ピルコンの染矢明日香代表は、休校措置がとられた3月から、月あたりの10代の相談件数が約2倍(月約50件が約100件)になったと発表。内容は「妊娠検査薬で検査したいが、バイトが休みになりお金がなくて検査ができていない」などのほか、「学校の先生から被害を受けている。親に相談できない」「兄弟が寝ている間に布団に入ってきて、体を触ってくる」「母親の恋人から性暴力を受け、妊娠していないか心配」などの性暴力事例もある。性暴力に関する相談については専門の支援機関を紹介するとともに、気持ちを受け止めて寄り添う支援をしているという。

また、「なんで日本には世界と同じレベルの避妊法がないの」「なんで世界のような性教育がないの」という疑問から日本の性の問題に取り組む「#なんでないのプロジェクト」がピルコンと共に5月に行なった調査によれば、「配偶者からストレスがたまっているので相手をしろと責められ性行為を断れなかった」というDV事例もある。そして、コロナ禍で意図しない妊娠への不安を抱いたと答えた人のうち、緊急避妊薬を入手したのはわずか17・2%。薬が高額であることと産婦人科受診への抵抗感に加え、コロナ感染への不安も受診をためらう理由となっている可能性があるのではとプロジェクトは分析している。

「緊急避妊薬を性被害者だけに処方するべきという意見もあって驚くが、被害者は医師に被害を言わないことも多い。人にはさまざまな事情があり、医師が表面的な理由や態度でジャッジすることはできない」と話す遠見才希子医師。(撮影/宮本有紀)

現在、オンライン診療による緊急避妊薬処方も解禁されているが、産婦人科医の遠見才希子氏は、「会計はカード決済が多く、診療にアクセスできるのは一部」と指摘。「世界保健機関(WHO)は、意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性は、緊急避妊にアクセスする権利があると勧告しており、WHOなど複数の団体が発表した文書では安全に使用できる薬で、医学的管理下に置く必要はない、薬局のカウンターでの販売が可能と明記されている」とし、「オンライン診療体制の整備と同時に、薬局で緊急避妊薬を入手できるようにすることが重要。対面診療、オンライン診療、薬局での避妊薬入手と選択肢を広げることが望ましい」と提言した。

宮本有紀・編集部(2020年7月3日号)

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