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首脳会談から20年、南北緊張高まる 
なぜ北朝鮮は連絡事務所を爆破したのか?

2020年6月29日7:16PM

【国連制裁で身動き取れず】

「一体、板門店宣言と9月平壌共同宣言で南朝鮮(韓国)当局がまともに実行したものが一項目でもあっただろうか」

金与正氏は今年6月17日の談話で韓国政府をこう批判した。経済協力に関しては、韓国側が「国連制裁の枠内で」という前提条件を付けてきたとして、南北関係の悪化の背景に「南朝鮮(韓国)当局の親米事大・屈従主義」があると断罪した。経済制裁を口実に、韓国政府が開城工業地区と金剛山観光事業の再開を決断しないことに、北朝鮮は苛立ちを隠さない。

しかし、文政権は米国の圧力や国連安全保障理事会の制裁で身動きが取れない状態だ。北朝鮮が核実験や弾道ミサイル実験を繰り返す間に国連安保理の制裁内容は厳しさを増した。13年までは制裁対象が軍需部門に限られていたが、16年からは民生部門にも拡大した。外貨収入の制限、石炭などの北からの調達禁止、海産物などの輸出封鎖、繊維製品の輸出禁止などだ。17年12月の制裁決議では海外出稼ぎ北朝鮮労働者の24カ月以内の本国送還を求めた。北朝鮮労働者の海外派遣は困難だ。仮に韓国の決断で金剛山観光や開城工業地区の操業が再開されても、現地への物資搬入や労働者雇用などに支障を来すのは明白だ。

北朝鮮は、核開発と経済建設の並進路線の終息を宣言し、核実験と弾道ミサイル実験を凍結した。咸鏡北道の豊渓里核実験場も廃棄した。だが、二度の米朝首脳会談後も米朝関係は改善せず、国連による制裁は解除されないままだ。新型コロナの世界的流行で貿易の9割を占めるといわれる中国との貿易額も大幅に減少した。

経済的苦境に立たされるなか、経済協力が進まなければ韓国との関係改善には意味がないことを、北朝鮮は最もショッキングな形でアピールした。連絡事務所の爆破に続き、北朝鮮は経済協力の象徴だった金剛山と開城に連隊級の部隊を派遣すると宣言した。

(文聖姫・編集部、2020年6月26日号)

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