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ユニオン・ショップ制度を「少数組合排除」に悪用 
「サンプラザ」で“労労対立”

村上恭介|2020年1月9日11:32AM

【店長が組合加入を強要】

特に大阪府労委で問題になったのは15年3月、パートの雇用契約書を改定して「ユニオン・ショップ協定に基づき、原則としてサンプラザユニオンの組合員になること」と明記し「はい・いいえ」のいずれかに記入するよう求めたことだ。面接した店長らは「はい、でいいよね」と言いつつ第二組合加入をパートに求めたばかりか、中には勝手にマル印をつけたり、いいえの回答を修正させたりするケースさえあった。

大阪府労委は17年12月、店長にはパートの募集・採用、配置、昇給、準社員登用、契約更新など幅広い人事権があると指摘したうえ、雇用契約の更新に当たりユニオン・ショップ条項に同意するよう求めたことは、実質的に第二組合への加入を強要し、第一組合の弱体化をはかる不当労働行為に当たると認定、謝罪を命じた。会社はこれらの取り消しを求める行政訴訟を起こしたが、大阪地裁は今年10月、会社の請求を退ける判決を言い渡し、確定している。

このほかにも府労委は、第一組合員に対する会社の懲戒処分や賃金差別、配置転換、残業禁止命令などについても「不利益扱いの不当労働行為」として是正を命じた。

問題は相次ぐ救済命令にもかかわらず、会社が第一組合敵視の姿勢を変えず、不当労働行為と認定された店長らの組合勧誘活動も続いていることだ。サンプラザ労組の上西順一執行委員長は「同じ連合大阪に属する組合なのに、なぜUAゼンセンは私たちの組合を切り崩そうとするのか。連合には調整能力さえないのか」と憤る。

西谷敏・大阪市立大学名誉教授(労働法)は、サンプラザユニオンについて「人事権を持つ店長は会社の利益代表者といえ、御用組合の疑いが強い」と指摘したうえ、特にユニオン・ショップ協定の悪用を厳しく批判する。

「労働組合は労働者が自由に結集しないと強くならないが、ユニオン・ショップ制度は個々人から組合加入、脱退の自由を奪い、企業別組合が緊張感を失って弱体化する最大の原因となっている。先進国では団結しない自由や勤労の権利を侵害する制度として、違法とされるか厳しく制限されるのが一般的だ。今回の事件では組合員の統制強化のみならず既存労組をつぶす手段として積極的に悪用しており、ユニオン・ショップ協定の最悪の利用形態といえるだろう」

UAゼンセンはそうまでして、なぜサンプラザの経営者に加担するのか。大阪府支部の担当者は「個別労使の問題であり、コメントできない」と取材に応じなかった。

(村上恭介・ジャーナリスト、2019年12月13日号)

 

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