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朝鮮人虐殺追悼集会をつぶす? 
「そよ風」慰霊祭の目的は

植松青児|2019年9月27日8:46PM

700人(主催者発表)が集まった朝鮮人犠牲者追悼集会。(撮影/植松青児)

1923年の関東大震災から96年となる9月1日、東京・墨田区の都立横網町公園内では三つの追悼行事がほぼ同じ時間に行なわれた。慰霊堂では震災の犠牲者を追悼する東京都主催の大法要が行なわれ、公園内の一角にある朝鮮人犠牲者追悼碑のそばでは「朝鮮人犠牲者追悼集会」(同実行委員会主催、以下、追悼集会と表記)が行なわれた。この追悼集会は震災時の朝鮮人虐殺犠牲者を追悼するために73年から行なわれている。今年は700人(主催者発表)が参加し、献花の列は30分をすぎても途切れることがなかった。

問題はあと一つの慰霊集会である。先述の追悼集会から直線距離で30メートルも離れていない公園内で、一昨年から“日本を愛する”女性団体「そよ風」(涼風由喜子代表)が、「真実の慰霊祭」を行なっている。今回の会場には「六千人虐殺の濡れ衣を晴らそう」という大きな看板が立った。

奇妙なことに、「真実の慰霊祭」という名称と「六千人虐殺の濡れ衣を晴らす」というスローガンの間には大きな乖離がある。慰霊の対象は関東大震災で亡くなった人々のはずだが、スローガンが示す「濡れ衣を着せられた」人々は、震災で落命せず生き延びた人々であり、この日の慰霊の対象にはなりえないからだ。集会の設定が明らかにチグハグなのである。

「そよ風」を代表した登壇者は慰霊祭の冒頭で「大震災でお亡くなりになった方々への追悼と、その後東京を復興させた方々への感謝の気持ちを伝える」ために開催したと言明したが、これはかなり苦しい説明だろう。その後のゲストスピーチでも鈴木信之・葛飾区議などから「6000人虐殺はありえない」さらには「韓国は嘘つき」「川崎市のヘイトスピーチ条例制定に反対する」という発言が相次ぐ。内容的には、慰霊祭の形式を借りた歴史修正主義者・レイシストの集会であり、「大震災の被災者を利用している」という批判を免れないものだった。

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