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琉球遺骨返還訴訟、人類学会の「保存」要望に原告ら抗議

平野次郎|2019年9月25日4:08PM

日本人類学会への要望書への批判が相次いだ裁判後の報告集会。(撮影/平野次郎)

京都大学が保管する琉球民族の遺骨返還を求める訴訟(本誌2月1日号参照)をめぐり、日本人類学会が同大学に「古人骨は国民共有の文化財という認識に基づいて対応してほしい」とする要望書を提出した。これ対し同訴訟の原告や支援者らが猛反発。7月30日に京都地裁であった第3回口頭弁論後の報告集会では「被告の側に立った不当な介入だ」「中立であるべき学術団体としてふさわしくない」などの批判が相次いだ。

人類学会の京大への要望書は篠田謙一会長名で山極壽一総長宛に7月22日付で出された。古人骨の継承について、学術的価値を持つ国民共有の文化財として保存継承され研究に供されること、古人骨の由来地を代表する地方公共団体に移管する際は研究資料として継続的に提供されることなどを原則にすべきだと主張。ここでいう古人骨は「政府による特別な施策の対象となっているアイヌの人たちの骨」と「民法において定義されている祭祀承継者が存在する人骨」は含まれないとしている。

これに対し原告団長で琉球民族遺骨返還研究会代表の松島泰勝・龍谷大学教授は8月20日、同学会に抗議文を送った。抗議文では(1)人類学会などが2017年にまとめた「これからのアイヌ人骨・副葬品に係る調査研究の在り方に関するラウンドテーブル」によると、アイヌ民族遺骨の慰霊と返還が研究より優先されるべきとの判断が示されているが、琉球民族の遺骨には同様の対応をしない理由、(2)琉球遺骨返還訴訟の原告は祭祀承継者ではないと認識する根拠、(3)遺骨を文化財として保管することができるとする法的根拠、などについて回答を要求している。

さらに「琉球民族の信教の自由を犠牲にして、祖先の遺骨を『文化財』として研究者の研究のために提供することが強いられている。(中略)構造的差別の問題である」として謝罪を求めている。

(平野次郎・フリーライター、2019年9月6日号)

 

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