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「近畿リハビリテーション学院」パワハラ訴訟は和解成立 
厚労省はガイドライン改定へ

村上恭介|2019年5月15日10:26AM

一審判決後、学校前で宣伝活動を行った遺族、支援者。(撮影/村上恭介)

理学療法士養成の専門学校「近畿リハビリテーション学院」(大阪府摂津市)に通っていた大野輝民さん(当時39歳)が自殺したのは、実習先の診療所で受けたパワーハラスメントが原因として、妻の佳奈子さん(45歳)が学校と診療所を運営する各医療法人に約6100万円の損害賠償を求めていた訴訟(本誌2018年2月23日号、同7月6日号既報)は4月8日、大阪高裁で和解が成立した。

遺族が訴えていたのは、専門学校を運営する「高寿会」(大阪府吹田市)と、診療所を運営する「一裕会」(大阪市住吉区)。和解条項では、両法人が輝民さんの死について「強い遺憾の意」を示し、解決金として各1500万円、計3000万円を支払うとともに、学校側は今後、国の法令やガイドラインなどを順守し、再発防止策をとることを盛り込んだ。

昨年6月の大阪地裁判決によると、国家資格の理学療法士をめざし近畿リハビリテーション学院に通っていた大野さんは、卒業前の臨床実習を大阪市内の辻クリニックで受けたが、指導担当の理学療法士から大量のレポート提出を課せられ睡眠2~3時間の過酷な日々が続いたばかりか、強い口調で「帰れ」などの叱責を繰り返され、2013年11月、「もう無理」「終わらせたい」と走り書きした遺書を残して縊死した。

診療所側はパワハラを否定したが、一審判決は指導役が「次やったら終了」と述べ実習中止を示唆するなど過度に心理的負荷を強いたのは違法とし、自殺は予見できたと認定した。また専門学校には、大野さんが自殺直前に相談したのに何ら対応しなかったと指摘。両法人ともに学生の健康に留意すべき安全配慮義務違反があったと結論づけ、6100万円全額の支払いを命じていた。

今回、大阪高裁の和解提案に遺族が応じたのは「この一審判決をわずかでも後退させず、後に続く学生たちがこれを土台にたたかえるようにしたい」と判断したためだ。佳奈子さんは「今も理学療法士の実習現場ではパワハラが続いている。業界は自ら変わらなければ時代に取り残されることを自覚してほしい」と訴えている。

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