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2基2600億円以上「地上イージス」配備に住民反対決議 
秋田市

片岡伸行|2018年9月11日10:26AM

秋田市新屋の勝平地区コミュニティセンターで8月18、19日に開かれた「イージス・アショア」説明会。(撮影/高坂昭一)

夏の甲子園を沸かせた秋田県立金足農業高校のある秋田市で今、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備をめぐる国の一方的なやり方に住民の不安と怒りが広がっている。山口県とともに陸上自衛隊演習場を配備候補地とされた秋田市新屋の勝平地区コミュニティセンターで8月18、19の両日、防衛省東北防衛局による説明会が開かれ、参加した計500人近くの住民から不安と疑問の声が相次いだ。

そもそも他国から発射された音速の約20倍で落下してくるミサイルを地上から打ち落とすことが可能なのか大いに疑問だが、その無謀なシステムを安倍晋三首相はトランプ米大統領とのゴルフの翌日に突如「購入する」(2017年11月6日)と口約束し、同年12月に「2基導入」を閣議決定。当初1基1000億円とされた取得費は2基で2680億円に膨れ、設備費や関連施設費などを含めて6000億円、1兆円とも言われる。

秋田での説明会は6、7月に続いて三度目だが、当然ながらこの間、「西日本で大変な災害があったのに、なぜ兵器に大金を使うのか。被災者に税金を使うべき」との声も上がったという。

【全16町内会が反対決議】

今回の勝平地区でも、▼強力な電磁波による健康被害が不安▼年間50回ほど飛行する秋田市内の病院へのドクターヘリの飛行が制限を受ける▼住宅密集地や公共施設が近すぎる――などの不安や懸念の声が出された。

「イージス・アショアを考える勝平の会」共同代表の近江幸義さん(68歳)は話す。

「すでに配備されているルーマニアでは一番近い大きな街で5キロメートル以上離れていますが、ここは一番近い住宅まで300メートル、500メートル以内に勝平小学校と秋田商業高校があり、3キロ以内には秋田市役所と秋田県庁、市立病院、スポーツ施設などがある。住民の不安の声に対し、防衛省戦略企画課の五味賢至課長は『不安のないよう努力する』『対策を検討する』などと言うばかりで、具体的にどんな努力や対策をするのか一切答えない。調査をさせてくださいの一点張りです。住民の疑問や不安に誠意をもって答えようという気はさらさらなく、配備ありきの姿勢でした」

6月に秋田に説明に訪れた小野寺五典防衛大臣同様、「丁寧な説明」は皆無だったようだ。

近江さんはまた、防衛省側にこう質問した。

「かりに(イージスが)配備されたとして、配備されてよかったという点を三つ挙げてほしい」

しかし、当惑した防衛省側は即答できず、メリットを挙げられなかった。ないからなのだろう。

約1万3000人、5300戸の勝平地区では全16町内会で構成する勝平地区振興会が「基地は必要ない」と反対決議をしている。

近江さんは言う。

「われわれの力の糧は、全16町内がまとまって『イージス配備は要らない』と言っていること。佐竹(敬久)県知事も穂積(志)秋田市長もそれぞれ防衛大臣に質問状を渡したりしていますが、まだ明確に『反対』の声を上げていません。われわれも知事と市長を守るから、知事と市長は住民を守ってほしい」

一方、8月22日付『秋田魁新報』電子版によれば、防衛省は8月21日までに、地質調査や周辺環境調査などで配備に不適当となった場合でも、新たな候補地は山口・秋田両県付近にするとの意向を山口県に伝えたという。

「イージス・アショアを考える勝平の会」は毎週金曜日、勝平地区で宣伝行動を展開するほか、配備に反対する「県民の会」とともに毎月曜日には県庁と市庁舎前でもアピール行動を続けている。

「秋田市を基地の街にしてはいけないというのがわれわれの思い。来春の統一地方選、夏の参院選が“勝負”だと見ています。われわれは国が撤回するまで反対の声を上げ続けますよ」(近江さん)

(片岡伸行・編集部、2018年8月31日号)

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