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“霞ヶ関の盲腸”公安調査庁「局」格下げ間近

2018年8月22日1:00PM

法務省。(撮影/編集部)

法務省の外局・公安調査庁を内局の「公安調査局」へと格下げすることを首相官邸が検討していることが分かった。政府関係者が明らかにした。1952年に「過去に暴力主義的破壊活動を行い、将来も行う恐れのある団体」を調査することを目的に発足し、日本共産党や朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)、旧オウム真理教幹部らを監視対象においてきた組織は歴史的な節目を迎える。

同庁の格下げは法務省の組織再編の一環。今年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)では、少子高齢化にともなう労働力不足を補うために「新たな外国人材の受け入れ」を決め、農業、建設などの分野で新たな在留資格の創設を打ち出した。全国で外国人が増えることを踏まえ、上川陽子法相は7月24日の閣議後会見で「入国管理庁のような外局を設けることも含め検討したい」と発言。現在は内局の一つである入国管理局を「庁」へと格上げし、機能を拡充する意向を示した。

【霞が関の“盲腸”】

時代の変化にともなって任務が増えてきた入国管理局とは裏腹に、任務が減ってきた、あるいは任務そのものが存在するのかどうかと揶揄されてきたのが「霞が関の盲腸」と呼ばれる公安調査庁だ。

経済官庁の幹部は「公安調査庁って何か仕事しているの? 成果なんて聞いたことがないよ」とせせら笑う。オウム元幹部の1人は「自分はもう麻原彰晃なんてどうでもいいと思っているのに、いつまでたっても公安庁が監視してくる」と吐露する。「あいつも、こいつも、みんな麻原の影響下だとレッテル張りをすることで公安庁は自分たちのレイゾンデートル(存在理由))を維持している」

東京都内の元右翼団体幹部も、呆れるしかない組織だと語る。

「もう我々の団体は高齢化し、数も減り、資金力もない。往年の勢いは見る影もないのに、いまだに公安庁は『我が国最大規模の右翼団体』と位置付け、調査官がやってきては根ほり葉ほり質問してくる。答える内容はいつも同じなんだが。予算を減らされないよう、任務を大きく見せたいんだろ」

マスコミ内にも、選挙のたびに野党候補に関するネガティブ情報を送りつけてくる調査官たちに呆れる記者が少なくない。

6月10日に投開票された新潟県知事選は接戦の末に与党候補が勝ったが、選挙戦の終盤、公安庁調査官らは付き合いのある新聞記者や雑誌記者らに野党候補に関する根拠不明の情報をメールやLINEで大量に送り付けていた。メールを受け取った記者の1人は「いかに自分たちが次元の低いことをやっているのか、彼らには自覚がまったくない」と溜息をつく。

2015年、中国で「公安庁の協力者」とされる愛知県と神奈川県の男性が逮捕され、この7月にそれぞれ懲役12年と5年の実刑判決が下された事案は霞ヶ関内の公安庁不要論をより強めた。日本政府は公式には認めていないが、警察庁や外務省も公安庁と同じように独自の「協力者」を作り、育て、外国で情報収集活動(スパイ活動)をさせていると言われる。公安庁の中には「協力者にスパイ活動をやらせているのは、うちだけではないじゃないか」と愚痴をこぼす調査官もいる。しかし警察や外務省は協力者を守る体制も整えている。よほどのことがない限りスパイ活動が表面化することはない。

公安庁と犬猿の仲である警察庁の関係者はこう評す。

「警察は、まずは人間関係をつくり、信頼関係を醸成した上で協力者になってもらう。公安庁は違う。信頼関係を醸成していくだけの胆力が彼らにはないから、すぐにお小遣いをあげるようになり、カネの力で人を動かそうとする」

政府関係者は「麻原彰晃(松本智津夫)らオウム事件首謀者らの死刑執行がなされたことで公安庁は節目を迎えた。しかしなくしはしない。入管を少し上げ、公安庁を少し下げるというだけの話だ」と言うが、公安庁の調査官たちは気が気ではない。

(本誌取材班、2018年8月3日号)

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