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34年前の強盗殺人事件、再審決定 
警察の「インチキ」捜査バレる

粟野仁雄|2018年7月31日10:26AM

「再審開始」の幟を揚げる弁護団。右が阪原弘次さん、左は伊賀興一弁護士。(撮影/粟野仁雄)

1984年、滋賀県日野町で酒店の女性店主が殺され、手提げ金庫が奪われた日野町事件。強盗殺人罪で無期懲役が確定し、服役中の2011年に病死した阪原弘さん(享年75)の遺族が求めた再審について、大津地裁(今井輝幸裁判長)は7月11日、再審開始を決定した。

物証はなかったが、手提げ金庫が捨てられていた山中に、阪原さんが迷わずに捜査関係者を案内したという「引き当て捜査」での状況証拠が有罪の大きな決め手だった。しかし再審請求審で裁判所が検察にネガを開示させると、捜査陣が「帰り」に阪原さんを金庫の方に向かせて撮影した写真を「行き」の写真として提出していた。殺害方法も弁護側提出の「左手を首の後ろに当てていたという自白は遺体の状況と合わない」との新鑑定を認めた。主任弁護人の伊賀興一弁護士は「旧証拠と新証拠を詳細に吟味した決定」と評価した。

長男の阪原弘次さん(57歳)は「こんなこと(朗報)は初めてで動揺してしまった。母親に電話したら泣いて喜んでいた。父親は逮捕された時、『誰が何を言おうがお前たちは信じてくれ。俺は何もしとらん』と私と妹に訴えていたのを思い出す」と話した。

金庫は先に警察が発見しており決定的な「秘密の暴露」ではないが、「犯人しか知りえない」を演出した捜査側の悪質な偽装だった。

毎日放送(MBS・大阪市)の記者時代から長年、事件を冤罪として追ってきた里見繁関西大学教授は決定の瞬間、涙顔になり「あんな引き当て捜査を検察の思惑通り、犯人しか知りえない秘密の暴露としてしまう確定審の裁判官が問題」と批判した。

この事件、一審では大津地裁の裁判官が担当検事に訴因変更をもちかけ、立証が危うくなった犯行時間帯が大幅に拡大されている。濡れ衣で二十数年間も獄に囚われ、無念の獄死をした犠牲者に裁判所はどう応えるのか。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、2018年7月20日号)

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