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大東建託、相次ぐ社員自殺の背景

三宅勝久|2018年6月29日5:49PM

アパートを建てて一括で借り上げるという賃貸建設管理業の最大手・大東建託株式会社(本社・東京都港区、熊切直美社長)で、社員の自殺が相次いでいる。内幕を探ると、「いい部屋ネット」の宣伝文句から受ける好印象とは裏腹の陰惨な実態が浮かび上がった。

1兆5570億円(2018年3月期)の売上高を誇る大東建託の本社ビル(東京都港区。撮影/三宅勝久)。

Aさんの自殺

大東建託藤枝支店(静岡県藤枝市)の建築営業社員Aさん(享年42)が自殺したのは2007年10月のことだ。2年後の09年秋、遺族は大東建託を相手に、損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こす。審理で浮き彫りにされたのは派手な広告とは似ても似つかない陰惨な職場風景だった。

遺族側によると、Aさんは携帯電話のGPS機能で四六時中監視されながら、しばしば1日15時間を超す長時間労働を強いられ、土日もほとんど休めていなかった。

「たいていは1年で辞める。3年いたらベテランだ」と言われる職場にAさんは5年いた。亡くなるしばらく前から、不眠や口数が少なくなるなどの変化が見られた。「辞めたら」という家族の助言に「今の仕事が終わったら辞める」と話していた。その最後の仕事がトラブルとなり、疲弊した精神に致命的な打撃を与えたのだ。

どんなトラブルだったのか。

Aさんはある顧客に宛てて「申し訳ありませんでした」と書き残していた。この顧客と支店との間で交わされた「覚書」も発見された。覚書には、支店長と課長、Aさんの3人が、この顧客に対して約770万円を払うという内容が記載されていた。また、770万円の負担割合について、支店長と課長、Aさんの間で「合意」がなされていた。支店長と課長がおよそ各200万円、Aさんが360万円を払うというものだ。

つまり、Aさんは上司から360万円を払えと再三求められていたのだ。会社に勤めながら360万円を払うというのだから尋常ではない。事情はこうだ。

顧客は静岡県内の元旅館主だった。廃業した旅館を壊してアパートと一戸建ての自宅を建てる計画を、Aさんが担当となって進めた。乗り気でない旅館主を説得して契約にこぎ着けた。だが銀行融資が出ずに頓挫する。解約を嫌がる上司の要求で、計画変更をして再提案する。自宅部分をアパート棟の内部に作る案で、これなら銀行融資が得られそうだった。

再び旅館主を口説き、工事が始まる。しかしまた暗礁に乗り上げる。アパートの工費増額に伴って自己資金が770万円増額になった。それに気づいた旅館主が「解約したい」と言い出したのだ。上司はなおも計画続行を要求、Aさんは板挟みになる。たどりついたのが、「770万円」を支店で肩代わりするという案だった。

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