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潮目変わる安倍政権

西谷玲|2018年3月29日4:37PM

盤石と見られた安倍政権に揺らぎが見え始めた。

ご存知のように、政権がこの国会の最重点法案と位置付けている働き方改革関連法案で、裁量労働制関連の労働時間の調査データで異常値が大量に発見された。国会は大荒れになり、結果として裁量労働制の拡大は法案から削除されることになった。

そして、ここにきて森友学園問題が再燃。『朝日新聞』がスクープした、森友学園への国有地売却での財務省の決裁文書の書き換え問題だ。契約時と昨年2月の問題発覚後で文書が書き換えられているというのである。国会でもすぐに取り上げられたが、麻生太郎財務相は捜査中を盾に、文書が手元にないとして正面から答えなかった。国会は大紛糾して、まだまだこの問題は続く模様である。

それに先立って、内閣で一件の人事があった。江崎鉄磨沖縄北方担当相が辞任して、後任に福井照氏が決まった。ここにも安倍政権のゆるみが象徴されているように思えてならない。

江崎氏は就任当初から「自分は素人」といい、国会答弁について「役所の原稿を朗読する」と述べるなど問題発言が目立った。彼の起用は二階俊博自民党幹事長の推薦枠だったが、そもそも本人が「自分は大臣の任に非ず」として、二階氏に大臣になりたくないと申し出ていたのである。

これだけ大臣になりたいという国会議員がいるなか、である。しかし二階氏はそれを聞き入れず、本人の危惧通り問題発言を連発し、健康上の理由で辞任へと至った。そして後任の福井氏である。二階派の事務総長だった人物で、つまり沖縄北方相の大臣ポストは「二階枠」で、即決まった。

この人物、何かと問題が多いように見受けられる。これまでも週刊誌で女性コンパニオンに抱きつく写真が掲載され、妻以外の女性と海外旅行をしていたことも報じられている。政界でも、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が国会で審議されていた委員会の理事だった同氏は「強行採決という形で実現するよう頑張る」と発言、理事を辞任している。

大臣就任後も早速「色丹(島)」を「しこたん」と読むところを「しゃこたん」と読み、撤回した。福井氏が地雷となりうることは十分に予見できたはずである。いわゆる「身体検査」も十分にしたとは思えず、今後もスキャンダルなどが噴出する可能性も十分にある。

一連の出来事はすべて共通している。平たい言葉で言えば、国民をなめているとしか思えない。軽く見ているのだ。国民の生活や命に大きくかかわる働き方で根拠となるデータが間違っている。公文書を書き換える。大臣不適格と思われた人物の後任に、あれこれ問題を抱えた人物を据える。

どれ一つをとっても、本来だったら政権を揺るがす事態につながるような問題である。それを連発する。きわめて内向きの論理だけで政権は動いており、おごりがあるように思えてならない。

首相は9月の総裁選に向けて自信満々のようである。しかし、総裁選は地方票のウエイトが大幅に増えるよう改正されており、永田町の論理だけではもはや通用しないようになっている。この改正についてはまた機会を改めてふれたいが、安倍政権、もしかしたらここが潮目になるのかもしれない。

(にしたに れい・ジャーナリスト、2018年3月9日号)

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