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死刑執行後に請求の「飯塚事件」 高裁も再審開始を認めず

小石勝朗|2018年3月2日1:06PM

1992年に福岡県で小学1年の女子児童2人が殺害された「飯塚事件」で死刑が確定し、2008年に執行された久間三千年さん(執行時70歳)の妻が起こしていた再審請求に対して、福岡高裁(岡田信裁判長)は2月6日、認めない決定をした。弁護団は最高裁へ特別抗告する。

久間さんと犯行を直接結び付ける物証はなく、自白も取られていない。再審無罪になった足利事件と同じく、警察庁科学警察研究所(科警研)によるMCT118型のDNA鑑定結果が、死刑判決を導く状況証拠の柱になった。

決定は、MCT118型の鑑定結果が久間さんのDNA型と「一致したと認めることも、一致しないと認めることもできない」と証拠から排除したが、ほかの状況証拠から「久間さんが犯人であることが重層的に絞り込まれている」と断定した。

審理では、女児2人の遺留品発見現場付近で久間さんの車と特徴が一致する車を見た、という男性の証言の信用性が焦点になった。男性が目撃した車の車種を久間さんの車と同じものに特定した経緯に不審な点があり、弁護団は「警察の誘導があった」と主張した。

これに対して高裁は、男性が目撃現場へ行って確認した上で警察官に申告しているとして、「より記憶を正確に喚起して目撃した状況を語ることが可能だった」との論理で誘導を否定した。

弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は「死刑が執行されており、再審を認めれば死刑制度の根幹を崩す」と請求棄却の原因を分析。「技官の証言だけで科警研の血液型鑑定の正当性を認める一方、説明しにくい大事な点は判断を避け逃げている」と決定を批判した。

結審時点の担当裁判官の一人が、一審で死刑判決を出した3人のうちの一人だったことも判明。「公平な裁判を保障した憲法に違反する可能性がある」と指摘した。

(小石勝朗・ジャーナリスト、2018年2月16日号)

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