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日本テレビは削除した小泉元首相の登場場面を放送すべき――米国の訴訟で福島の“闇”暴く

2017年11月7日2:35PM

訪米したエイミー・ツジモト氏(右)と、小泉元首相。2016年5月17日。(撮影/横田一)

10月9日放送の日本テレビ系列NNNドキュメント「『放射能とトモダチ作戦』 米空母ロナルドレーガンで何が?」で、安倍政権への忖度が疑われる番組改変が行なわれた(10月20日号本欄で紹介)が、番組制作に当初から協力した日系4世で被爆2世のエイミー・ツジモト氏はこう語る。

「削除された小泉純一郎元首相の登場場面を入れた続編を放送するべきです」

9月25日に小池百合子東京都知事(希望の党代表)と面談をしたことで政治色がついたと見なされて、番組内の登場シーンを削除されてしまった小泉元首相。

しかし、小泉氏は、昨年5月に訪米して「福島第一原発事故による放射能被曝で健康被害が出た」と訴える米軍兵士の話を聞き、帰国後に支援基金(トモダチ作戦被害者支援基金)を設立(約3億円を寄付)するなど、トモダチ作戦参加による米国兵士の被曝問題を広めるのに貢献をしたキーパーソンだったのだ。前号で日テレが安倍政権に忖度したのではないかと疑問を呈して、「被曝兵士救済に動かなかった安倍政権の職務怠慢を隠蔽したともいえる」と書いたのはこのためである。

【隠蔽情報を開示させる】

その小泉氏が期待しているのが、東京電力などに損害賠償請求をする被曝兵士の訴訟が米国で開かれることだった。「米国で裁判が始まれば、被曝の実態や、当時の艦内の線量や兵士たちの被曝量など、今まで隠されていた具体的なデータが出てくると思っている。それに期待している」(小泉氏)。

米国の裁判では「ディスカバリー(証拠開示手続き)」という制度があり、東電が放射能汚染について「いつ、どこで、何を、誰に知らせたのか」といった具体的な情報を報告する義務がある。これに対して東電は日本での裁判を主張。開廷場所をめぐる争いが続いていたが、ようやく米国で裁判をすることが決まったのだ(番組中で紹介)。これは、日本の被災者(被曝者)にもプラスだ。いまだに福島原発事故での放射能汚染(被曝)に関する情報が十分に公開されていないからだ。

総選挙で新潟5区から立候補して当選した泉田裕彦・前新潟県知事はこう振り返る。

「東日本大震災の時に福島県からSOSが来ました。被災地では停電して(放射能を測定する)モニタリングポストが動かないので『新潟県の機材と人を貸してほしい』と。しかしモニタリングポストが壊れているところに行くことは、『どれだけ高い数値か分からないところに行け』ということで、特攻隊を送り出す指揮官の心境でした。でも行かないと大勢の人に迷惑がかかるので、組織に厳命をしたのは『放射性物質の防護の知識を持っていて、食料と水は全部新潟から持っていって、かつ“短期間で交代する”という条件をつけ、“行ってもいいよ”という人に対してのみ出張命令をかける』という指示でした。それで、手をあげてくれた人がいたから派遣した。でも派遣したら福島県の態度が変わるのです。『新潟県の機材を汚すと申し訳ないので結構です』と言い始め、『汚れても壊れてもいいから使ってくれ』と言っても『申し訳ないが、お帰り下さい』という話になった。つまり隠蔽が始まっていたということだと思います」

「私はたぶん知りすぎた男で邪魔なのです。結局、何が起きたのかというと福島県から政府に情報をあげていなかったのです」

都内で開かれた9月10日の泉田裕彦ファンクラブ主催の「講演会&懇親会」での発言だが、泉田氏はこう強調した。「なぜ、(放射能汚染のデータを)公表をしなかったのか。『人の意図的な妨害がどこで起きたのか』というところを検証しないと、また同じことをやるという話なのです」。

トモダチ作戦被曝兵士の訴訟が米国で始まることで、6年半経った今も情報公開と検証が不十分な福島原発事故の“闇”が明らかになる可能性が出てきたといえる。今後の日米両国の動向から目が離せない。

(横田一・ジャーナリスト、10月27日号)

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