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増田元総務相に杉並区が異常な高額報酬――出勤2~3日で月額35万円か

2017年2月22日10:15AM

昨年7月の東京都知事選で落選した自民党の増田寛也元総務大臣を、東京都杉並区(田中良区長)が非常勤「顧問」として採用、毎月35万円、時給7万円から8万円(後述)にもなる破格の高額報酬を税金から支給している。田中区長は都知事選で増田氏を公然と応援していたことから、田中区長は「お友だち」に公金で「落選手当」を払っているようなものではないか、と区民から批判の声が上がっている。

増田氏の顧問採用は、区議会にも事前に知らされないまま区長部局内部の“密室”で行なわれた。都知事選で増田氏が落選したのが7月31日。そのちょうど1カ月後の8月31日に、杉並区は非常勤顧問職を新設した。顧問職新設は、条例ではなく規則の変更という議決を不要とする方法で行なった。そして、翌9月1日付で増田氏をこの顧問職に採用した。

公募などの手続きはいっさいなく、はじめから増田氏だけのための顧問職新設だった。

勤務条件は、勤怠管理なしにもかかわらず、報酬だけは毎月35万円が払われるという超好待遇。そして、事実9月の出勤は2日で、拘束時間は4時間半にすぎなかった。時給に換算すると7万円から8万円もの高額に達する。10月以降もこれと同様に、月2~3回の出勤が続いている。

仕事内容は、「地方創生に係る支援及び助言」。特に重要な責任はない。この気楽で簡単な仕事に対して月35万円は払いすぎではないか。筆者の指摘に対して、区側はこう反論する。

「増田氏の(岩手県)知事3期及び総務大臣を務めたこれまでの経歴及び地方自治、地方創生に関しての深い知見等を総合的に判断すれば(中略)月額35万円の報酬は妥当である」

しかし、その説明を疑わざるを得ない事実が情報公開請求で発覚した。区が作成した顧問職新設の起案文書のなかに、報酬を月額35万円とした根拠としてこんなことが書いてある。

〈週3日×4週=月12日×3万円=36万円〉

週3日、月12日の出勤を想定し、日額3万円として計算して月35万円という金額を算出したと明記している(計算上36万円だが杉並区は条例で上限35万円と定める)。

月12日の出勤を想定していたのにじっさいには2日~3日しか出勤していない。おかしいではないかとの疑問に、区側は説明ともつかない奇妙な言いわけをする。

「……規則を改正するに当たり、担当課である人事課が一般的な月額報酬の算定根拠を出すために作成した検討段階の内部メモであり(正式なものではない)……」

【杉並区は過去二度敗訴】

非常勤職員の報酬をめぐって、杉並区は過去二度にわたって裁判で敗訴している。最初は、月末の土日2日間だけ在籍した非常勤監査委員2人(自民党議員と民主党議員、当時)に月額報酬15万円を満額支給したことの違法性を問う訴訟。次は、半年間病欠した非常勤選挙管理委員(元自民党議員)に月額24万円の報酬を満額支給したことの違法性を問う訴訟だ。

非常勤の報酬は純粋に仕事の対価であって、名誉に対する支給でもなければ「生活給」でもないというのが地方自治法の趣旨。その立法趣旨を逸脱した支給は違法で無効だということがこれらの裁判の判決で明示された。

選管委員をめぐる裁判で杉並区の敗訴が確定した2015年11月。田中区長は「判決を真摯に受け止める」と委員会で答弁した。しかし、今回の件をみればその言葉は疑わしい。

筆者は区民のひとりとして増田氏の報酬返還を求める住民監査請求を11月に起こしたが、元会計室長や自民・民進系与党議員ら身内で固めた杉並区監査委員は棄却した。このため、これを不服として1月27日、住民訴訟を東京地裁に起こした。3月23日午前10時45分から東京地裁703号法廷で第1回口頭弁論が開かれる。事件番号は平成29年(行ウ)第45号。

(三宅勝久・ジャーナリスト、2月10日号)

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