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アイヌ遺骨コタンへ返還要求――大阪大が門前払い

2016年12月8日12:05PM

11月15日、大阪大学吹田キャンパスで営まれたイチャルパ。(撮影/平野次郎)

11月15日、大阪大学吹田キャンパスで営まれたイチャルパ。(撮影/平野次郎)

全国12大学が研究名目で約1600体のアイヌ民族の遺骨を保管している問題で、大阪大学が北海道伊達市の墓地から持ち去った遺骨39体の返還を求め、アイヌの人たちと支援の市民ら約20人が11月15日、大阪大を訪れてイチャルパ(慰霊祭)を営み、話し合いを申し入れた。だが大学本部は正面玄関を閉ざしたまま応対せず申し入れを門前払いにした。

申し入れたのは「アイヌ民族の遺骨の返還を求める有珠の会」と旭川アイヌ協議会、「阪大・人骨問題の真相を究明する会」。申入書などによると、これらの遺骨は大阪大医学部の小浜基次教授(故人)らが1962~64年ごろ伊達市の有珠善光寺遺跡を発掘した際に、墓地と見られる場所から掘り出した。小浜教授は当時、日本民族学協会による「アイヌ民族実態調査総合研究」の形質人類学部門の中心を担っていた。

遺骨はその後、研究室の廊下のガラスケースに動物の骨などと一緒に陳列されていたが、いまは他の場所に移された。有珠の会は2015年3月、遺骨や副葬品の返還を求める話し合いを申し入れ、大学側は「考古学的研究として適切に実施された」と文書で回答。その後は再三の申し入れにもかかわらず話し合いを拒否している。

一方、政府は各大学が保管するアイヌの遺骨を20年に北海道白老町に開設する「民族共生象徴空間」の慰霊施設に集約する計画を進める。14年6月の指針では、個人が特定された遺骨は大学側が祭祀承継者に返還するとしたが、特定できる遺骨は少なく、ほとんどが返還されない見通しだった。16年3月、北海道浦河町の墓地から掘り出された遺骨の返還を北海道大学に求めた訴訟が和解し、祭祀承継者でなくてもコタン(集落)に返還される道が開けた。有珠の会の帆江進代表は「大阪大も北海道大と同じように遺骨をコタンに返すべきだ」と訴える。

(平野次郎・フリーライター、11月25日号)

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