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牛久の入管施設でクルド人がハンスト抗議――「なぜ難民認定をしないのか!」

2014年9月24日12:35PM

抗議のハンストが続く牛久収容所(茨城県牛久市)の建物。(撮影/片岡伸行)

抗議のハンストが続く牛久収容所(茨城県牛久市)の建物。(撮影/片岡伸行)

国外退去を命じられている外国人の収容施設、法務省管轄の東日本入国管理センター(茨城県牛久市、通称・牛久収容所)で、9月1日朝からクルド民族の人たちが抗議のハンガーストライキに入った。同センターでは今年3月、収容者の男性二人が立て続けに病死する“事件”が発生した。牛久収容所で何が起きているのか。

「私たちは人間です。動物じゃない」――。収容されている31人の署名入りで、そのような記述のある要請文が9月2日に同センターに提出された。原文はローマ字で、地元の市民団体「牛久入管収容所問題を考える会」(田中喜美子代表)がそれを日本語表記に直した。

「世界のどこの国も クルド人 避難民として受け入れているのです。なぜ日本 クルド人を避難民として認めてないです」「この2、3年、トルコ――イラク――イラン――シリア政府を一緒になってクルド人の国民を殺害しているのです」「だから日本に避難民として難民申請を出しています」……。

たどたどしい記述が並ぶが、訴えている要点は次の5点だ。

(1)なぜ難民申請を受け入れてくれないのか(2)収容期間が長期にわたり心身の健康が損なわれている(3)何の罪も犯していないのになぜ刑務所のような収容所に閉じ込められるのか(4)不調を訴えても診察を受けるまでに1カ月以上かかる(5)薬は睡眠薬ばかり出される。専門の医者にかかりたい。

【「人権侵害ではないか」】

東京から電車で約1時間。常磐線牛久駅東口からバスで30分ほど。人里離れた場所に牛久収容所はある。施設正面入り口には以前、アウシュビッツを思わせるゲートがかかっていたが、「3・11」後に撤去されたという。さる7月、筆者はここを訪れ、前出の田中さんとともに若いクルド人(トルコ国籍)の男性(26歳)に面会をした。男性はトルコのシリア国境に近い村の出身。今年1月に成田空港で入国拒否され、牛久収容所へ移送されたという。収容期間はとうに半年を経過している。

「外の病院へ行くとき、手錠と腰縄をされる。外の人は犯罪者を見るような冷たい目で僕を見る。とても悲しく、プライドが傷つけられる。人権侵害ではないのか」

彼の左目には異状がある。トルコのシュルナク県で警察から取り調べを受けた際、電気を当てられる拷問を受けたという。

「トルコでは、クルド人というだけで差別され迫害を受ける。家族も欧州に逃れたが、難民として受け入れてもらっている。しかし日本は申請をしても認定してくれない。問題があるから出国したのに、日本はその国へ帰れと言う。もうトルコには戻りたくない。早く難民として認めてほしい」

刑務所のような透明のアクリル板の向こうで、彼は必死に訴えた。

2006年以降、難民申請件数は急増。13年には過去最高の3260人が申請をしたが、難民認定されたのはわずか6人だ。主要国では米国が1万9043人、フランス1万2552人、英国は9281人を難民認定(11年統計)。日本の冷酷さが際立つ。認定件数の異常な少なさとともに長期の収容が心身に深刻なダメージを与える。現行の難民行政はそれ自体が人権侵害と言っても過言ではない。国連からたびたび勧告を受け、7月に人権規約委員会が、8月29日には人種差別撤廃委員会がそれぞれ是正勧告を出したばかりだ。

同センターによれば、牛久収容所には約260人が収容され、6割近くが難民認定を申請中だ。今回の要請とハンストについては認めながらも、「施設内には医師が毎日来て診察をしており、医師のいない時間帯には看護師もいる。薬は医師の指示に基づいて対処している」(総務課)とし、冒頭の要請に耳を傾ける気配はない。

牛久収容所での抗議行動はこれまでもたびたび起きているが、これは日本の入管および難民行政そのものへの抗議にほかならない。

「人権尊重」の看板を掲げている法務省は、こうした収容者の声や国連からの勧告を、いつまで無視し続けるのだろうか。

(片岡伸行・編集部、9月12日号)

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