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民法750条の憲法判断せず 別姓訴訟請求を棄却

宮本有紀|2013年6月7日12:00AM

婚姻時に夫婦同姓を強制する民法七五〇条が憲法や女性差別撤廃条約に違反するとして、選択的別姓制度を求める五人の男女が法改正をしない国の立法不作為を訴える「別姓訴訟」の判決が五月二九日、東京地裁であった。

石栗正子裁判長は原告側請求を棄却。「婚姻当事者の双方が婚姻前の氏を称することができる権利が憲法一三条で保障されている権利に含まれることが明白であるということはできない」「民法七五〇条が憲法に反するものであるとしても(略)直ちに国会議員の立法不作為が(略)違法の評価を受けるものではない」とし、明確に合憲か違憲かの判断をしなかった。

請求棄却の判決を受け「司法だけは憲法を守った方向で結果を出してほしかったのに」などと失望を表明する原告団(前段)と弁護団(後段)ら。

請求棄却の判決を受け「司法だけは憲法を守った方向で結果を出してほしかったのに」などと失望を表明する原告団(前段)と弁護団(後段)ら。

判決後、原告側は控訴の意向を表明。原告の一人、小国香織さんは会見で「政治には期待できない状況なのでせめて司法だけは憲法をきちんと守った方向で結果を出してもらいたかった。上の裁判所にはそれを強く期待したい」と話し、原告団長の塚本協子さんは「この判決で私の名前はどこへ行ったの? 私の名前がほしいと心の中で叫んでいる」などと訴えた。

また、同じく原告の加山恵美さんは報告集会で「離婚時には婚氏続称という制度があって姓を選べるのにどうして入り口では選べないのか」と現制度を批判。吉井美奈子さんも「名前を変えたくないというのはわがままでなく自分を大切にしたいだけ。自分を大切にできない人が家族や他人を大切にはできない。いろいろな家庭があっていい。多様な価値観があるということに判決は踏み込んでいなくて残念」と述べ「私たちのゴールは司法判断よりも民法改正」と政治が動くことを期待した。

弁護団からは「一見中立な規定でも差別状況を生む七五〇条は女性差別撤廃条約の間接差別にあたる。条約施行の責任は行政と立法にあるのに責任をたらい回しにしている」「情けない判決」とし、「理解されるまで闘い続ける」と意思表明がなされた。
(みやもと ゆき・本誌編集部 2013年6月7日号)

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