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宮崎県延岡基地局訴訟で訴えを棄却――電磁波による健康被害は認定

2012年11月8日5:42PM

問題のKDDI基地局。周辺住民はいつまで苦しみに耐えればいいのか。(撮影/加藤やすこ)

 携帯電話基地局の設置で体調不良になったとして、宮崎県延岡市の住民が基地局を設置したKDDIに稼働停止を求めていた裁判(二〇〇九年提訴)の判決が一〇月一七日、宮崎地裁延岡支部(太田敬司裁判長)であり、住民の訴えを棄却した。

 判決では、住民が頭痛や耳鳴り、めまい、鼻血など共通した症状を、基地局稼働後に訴えていることは認めたものの、有害物質に曝されていると思うことで症状が表れる「ノセボ効果」を提示し、「不安感が影響している可能性を否定しきれない」として、因果関係の「立証は不十分」と判断した。

 原告団長の岡田澄太さんの家では、KDDIの測定でも四・四二八マイクロワット(μW)/cm2という電磁波の値が検出されたが、電波を止めると値は三万二〇〇〇分の一に下がり、同基地局の影響は明らかだ。一方、総務省の電波防護指針は、一〇〇〇μW/cm2まで認めているため、判決では「健康被害を引き起こす程明らかに異常な強度とはいえない」とされた。

 しかし日本の防護指針は欧州評議会の勧告値(〇・一μW/cm2)の一万倍も高い。またオーストリア医師会は今年三月、電磁波に関わる健康問題の診療の増加を受けて、ガイドラインを策定するなど対策を講じている。

 基地局の影響を沖縄で調査した新城哲治医師は「健康被害の訴えを安易に思い込みや不安と断定するのは危険。評価には、専門的な検査と高度の疫学的知識が必要だ」と判決を批判する。一方、弁護団長の徳田靖之弁護士は、「裁判官も健康被害は、認めざるをえなかった。世界中に影響を与える重大さにおびえた裁判官が、因果関係を認めないために腐心した判決だ」とし、岡田さんは「棄却は承諾できないが、日本で初めて健康被害の認定を求めた裁判で、認められた意義は大きい」と語る。原告は今月中に控訴する予定だ。

(加藤やすこ・環境ジャーナリスト、10月26日号)

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