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大飯原発の再稼働反対!「ツイッターデモ」広がる――首相官邸前に1万1000人

2012年7月2日5:24PM

野田首相、細野環境相、仙谷民主党政調会長代行、枝野経産相などの“遺影”を持って、原発再稼働に抗議する人々。(撮影/田中龍作)

長蛇の列は霞が関方面だけでなく溜池方面にもできた。(撮影/田中龍作)

 金曜恒例となった首相官邸前での「大飯原発・再稼働反対集会」(主催:首都圏反原発連合)が、国民運動の様相を見せ始めた。

 参加者の人数は、回を追うごとに最多記録を更新しており、六月一五日は一万一〇〇〇人(主催者発表)と膨れ上がった。

 この日、歩道は人でいっぱいになり車道にまで溢れた。勤め帰りの会社員、夕食の支度を済ませた主婦が続々と詰めかけた。「一度見たかったんですう」と、物見遊山で訪れた人が携帯電話のカメラで撮影する。ムバラク独裁政権を倒したタハリール広場の蜂起と似た光景である。

 一五歳の少年が叫んだ。「負の遺産を背負っていくのは僕たちです」。

 三児の母は声を振り絞って訴えた。「私には子どもを育てなければならない責任がある。安全に命をまっとうさせてあげたい」。

「いても立ってもいられずに岩手県盛岡市から駆け付けた」というのは高校教師の女性(三〇代)だ。

「労働者を被曝させて生活を破壊して。そんな原発はいりません。再稼働を強行するような政府もいりません」

 政府が大飯原発の再稼働を正式決定するとの懸念から、与党女性議員をはじめとする現職国会議員らも官邸前に立ち、反対の意思を伝えた。また、これまで一般市民に混じって官邸前抗議に参加することを控えていた民族派の人々も姿を見せた。

 老いも若きも男も女も右も左も主婦も代議士も皆、人道的見地から再稼働反対を訴えたのである。奇しくもこの日は、日米安保条約改定に反対する学生が国会に突入し、東大生だった樺美智子さんが圧死した日だ(一九六〇年六月一五日)。

 労働者や学生が連日、国会を取り巻く模様は当時ラジオが実況中継し、それを聞いた市民が駆け付けた。今はインターネットがライブ中継をする。

 皮肉なことに、六〇年安保当時には未発達だったテレビはこの日の集会を中継せず、無視を決め込んだ。残念ながらこの国のテレビは最初から最後まで市民の側に立つことはなさそうだ。

 エジプト市民革命では、フェイスブックなどで呼びかけ合った市民がタハリール広場に続々集まった。イスラム教の休日、金曜日に行なわれる「金曜礼拝」は合法的に群衆が集まる。金曜日は市民革命が大きくうねる日だった。

 選挙で民意を託したはずの民主党政権に裏切られ続けたこの数年に、日本でもそろそろ安保のトラウマを乗り越えて直接運動が根付きつつある。

 そういえば、首相官邸前で行なわれた集会の別名は「ツイッターデモ」である。

(田中龍作・ジャーナリスト、6月22日号)

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