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韓国の洗練された新・抗議活動――ソウルで反FTAライブ

2012年1月11日7:39PM

ソウル市の国会議事堂近くで行なわれた夜ライブには、ネットを通じて若者らが集まった。(撮影/金雄基)

 韓国ソウル市のヨイド広場で一一月三〇日、体感温度〇度の中、韓米FTA(自由貿易協定)反対トークライブが行なわれ、三万人以上(警察発表一万六〇〇〇人)の観客が集まった。

 ライブを呼びかけたのは今韓国で絶大な人気を誇るインターネットラジオ番組『ナヌン・コムスダ(けちくさい奴)』を運営する四人組。前国会議員、ネット新聞総帥、政治記者、評論家の四人は「李明博(大統領)狙撃手」を自負している。

 彼らのコメディ然としたトークが李大統領の不正疑惑を暴露し、それがツイッターなどソーシャル・ネットワーク・サービスで瞬く間に広まった。その信頼度は世論調査によると八五%。大手マスメディアの信頼は失墜して久しい。「今行動すれば発効を止められる。発効しても次の選挙で政権を替えて破棄できる」

 こう訴えたのは李正姫議員だ。また、一一月二二日の国会本会議で韓米FTA批准案が強行採決されようとした際、催涙弾を爆発させた金先東議員は「(催涙弾を)自分で浴びてるんじゃねぇ」と茶化され爆笑の渦も起こった。

 見ず知らずの観客同士を瞬時に一体化させ、「閣下のおかげで庶民は無茶苦茶だ」と、替え歌やパロディ映像で李大統領をこき下ろしてはいる。しかし、そこには“がなり声”のシュプレヒコールは一切ない。

 オンラインとオフラインが有機的に結びついた抗議行動はコンサート感覚で気軽に参加できる。ITと政治、そしてメディアに対するリテラシーの高さを利用したこの新戦術は、市民とりわけ若い世代の、既成政党への疑念をも吸い上げ、先のソウル市長補選では市民運動家を当選させた。

 来年の国会議員選と大統領選を占う上で、ネットメディアがどれほどの影響力を持つのかと同時に、新たに有権者となった在日韓国人がどう政治的リテラシーを高めていくかについても注目したい。

(金雄基・韓国弘益大学校助教授、12月9日号)

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