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「前代未聞の重大な誤り」――イレッサ控訴審判決に怒る被害者ら

2011年12月6日4:33PM

「私たちの闘いすべてを否定するような判決で怒りに堪えません」

 一九七九年、医薬品の安全性の確保に大きく前進した薬事二法を成立させた、整腸剤キノホルムによる薬害スモン事件の被害者が一一月一九日、東京・女性就業支援センターで開かれた薬害根絶フォーラムでこう訴えた。薬害スモンは五五年頃から被害を全国に散発的に発生させ、一万人を超える被害者を生んだ。女性は杖を片手に、半世紀にもわたる運動に身を捧げてきたのだ。この日は、一五日に下された薬害イレッサ訴訟の控訴審判決を厳しく批判する声が相次いで聞かれた。

 抗がん剤イレッサをめぐる薬害イレッサ訴訟では、東京高裁(園尾隆司裁判長)が国と輸入販売元アストラゼネカ社の責任を認めた東京地裁判決を取り消し、一審原告らは逆転敗訴した。

 原告らは、臨床試験でイレッサが原因だと考えられる死亡症例がいくつもあったのにそれを添付文書に記載しなかったとして、国とアストラゼネカ社の責任を追及していた。だが園尾裁判長は、〈民事損害賠償訴訟では「因果関係がある」か「因果関係が疑わしい」のかで責任を判断する必要がある〉 として、数々の症例は〈「因果関係がある可能性ないし疑いがある」にとどまり「因果関係がある」とまで認定できるものではない〉 ため、国と同社に責任はないとした。だがこれまでの薬害事件で国、企業が断罪されてきたことは、因果関係が明確でないという理由で安全対策を怠り、被害を拡大してきたことそのものにある。

 この判決に対し、薬害対策弁護士連絡会(鈴木利廣代表)は〈予防原則にのっとった安全対策は民事損害賠償訴訟上も国、企業に課せられた医薬品安全性確保義務であり、判決は前代未聞の重大な誤りを犯している〉との声明を発表。 全国薬害被害者団体連絡協議会(花井十伍代表)も抗議声明を出した。花井氏は「この判決が正しいとなれば、過去の薬害訴訟で認められてきた国の不法行為責任がすべて許されることになる。薬事行政を全面的に否定する言語道断の判決だ」と園尾判決を断罪した。

 一七日、原告らは最高裁に上告。大阪高裁での審理も続いている。薬害防止に繋がるまともな判決が聞けるのか、注目が高まっている。

(大西史恵・ライター、11月25日号)

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