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対米追従の姿勢も自民党と瓜二つの民主党――オスプレイを沖縄にごり押し

2011年7月10日9:49PM

「唯我独尊」「不誠実」「情報隠し」は東京電力だけの専売特許ではないようだ。垂直離着陸機「V22オスプレイ」を米海兵隊普天間基地に配備する米国の方針を伝えるため、六月一三日、沖縄県を訪れた防衛省一行も同類である。

 沖縄県庁六階の応接室。仲井眞弘多知事は、オスプレイが飛行した際に発生する騒音などのデータを求めた。北澤俊美防衛相は「もうデータは出してるんでしょ」と右隣の真部朗沖縄防衛局長に水を向けた。真部氏は「今、米国政府からデータを収集しているところ。整理した上で、出したい」。データはないというのだ。

 たまらず仲井眞氏が「それでは日本政府はどこで判断したのか」と言葉を荒らげると、北澤氏は色をなして反論。「騒音の数値は差し上げたはずだから。着陸時とかそういうところは……」と言いかけたところで真部氏が遮り、小声で言った。「それもこれから……データを整理していますから」。

 会談は沖縄方式で全面公開された。報道陣も唖然とした防衛省の「はじめに結論ありき」の姿勢には理由がある。日米首脳会談が日本政府の意に反して、今年五月から九月に延期させられたことからわかるように、オバマ米政権は菅直人政権を相手にしていない。二一日実施された外務・防衛両大臣による日米安全保障協議委員会(2プラス2)も、米政府はぎりぎりまで開催を確約しなかった。

 開催を確実にするべく、北澤氏はオスプレイ配備を含む日米間の懸案事項について駆け込みで成果を示そうとしたのであるが、実のところ、これまで空手形は何枚も切られている。その最たるものは、北澤氏がゲーツ米国防長官に日米共同開発を進めている海上発射型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の第三国への輸出を認める方針を伝えたことだろう。

 SM3ブロック2Aは、弾道ミサイルを迎撃する米国のミサイル防衛(MD)構想に含まれている。このミサイルが武器輸出の特例扱いとなっていることを利用して、完成品を米国経由で第三国へ輸出すれば、武器輸出三原則は骨抜きになる。

 国是をなし崩しにする重要案件にもかかわらず、議論らしい議論は行なわれていない。独善的な政権運営と批判されても仕方ない。

 オスプレイについて、おさらいしておこう。老朽化したヘリコプターの代替機で、北澤氏は「速度は二倍、航続距離は四倍」と高性能を強調するが、開発段階で四機が墜落し、三〇人の死者を出したいわくつきの航空機である。

 そのオスプレイ配備が予定される普天間基地は住宅や学校に囲まれた「世界一危険な基地」である。この配備は、燃え盛る火事現場に油をまき散らす結果になりかねない。民主党政権にとって大事なのは、国民の安全でなく、米国のご機嫌とりと考えるほかない。

 過去にも似た場面があった。米海軍は二〇〇五年一〇月、神奈川県横須賀基地の空母「キティ・ホーク」に代わり、原子力空母を配備すると発表した。

 いうまでもなく原子力空母には放射能汚染の不安がつきまとう。性能面では燃料タンクを必要としない分、空いたスペースに弾薬を搭載可能。核燃料棒の交換は二五年に一度で、ノンストップで世界中に展開できる強力な戦闘力が特徴といえる。

 日米安保条約の交換公文で定めた事前協議が必要な「装備の重大な変更」に当たるにもかかわらず、当時の自民党政権は単なる「装備の更新」とみなして配備を了承した。今回、民主党政権はオスプレイを「装備の一部更新」(北澤氏)で済ませようとしている。

 冒頭の会談で、北澤氏は普天間基地を名護市辺野古に移設し、二本の滑走路を造る「V字案」+自民党政権案を採用する考えも仲井眞氏に伝えた。

 今や双子のようにみえる民主党と自民党。対米追従の姿勢まで瓜二つである。辺野古移設を「実現不可能」と断じた米上院のレビン軍事委員長ら米国の政治家の方が日本の政治家より、日本の現状をまだ理解している。

(半田滋・『東京新聞』論説兼編集委員、6月24日号)

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