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情報不開示し続ける河川官僚――八ッ場ダム「検討の場」開催

2011年2月2日11:50AM

 国土交通省関東地方整備局は一四日、八ッ場ダム関係六都県が出席する「検討の場」を都内で開催した。八ッ場ダム建設を続行した場合、総事業費は約三一億円の増額、工期は三年延長となり、今後これを代替案と比較すると報告した。また馬淵澄夫前大臣から見直しを命じられた利根川水系の基本高水(洪水を防ぐための計画において、基本となる洪水)見直しの「中間報告」をし、実際の森林状況とは乖離した飽和雨量四八ミリを一二五ミリにして再計算したところ、流量が三%下がったという。

 基本高水は治水の目標数値として使われる流量で、この再計算が本当なら八ッ場ダムは必要であることを意味する。問題は、再計算とその正しさを、国交省以外の第三者が衆人環視のもとで再現できるかだ。計算式の有効性は、雨の降り方が複雑な場合に限界があることが分かっており、前提や係数の操作で簡単に結果を増減できる。つまり国交省がすべての資料を公開して、それを検証するしかその計算の正当性は証明できない。

 中間報告では基本高水を過大に操作できる他の要素(河道条件や一次流出率)が以前のままであることを筆者が指摘すると、「今回変えたのは飽和雨量だけ」(関東地整河川計画課)、黒塗りにしてきた「流域分割図」等については「今回も非開示です」(同)と豪語した。また、こうした検討結果は、河川局長が日本学術会議に依頼して選んだ「中立」な委員会に評価させるという。

 しかし、このままでは無意味である。これまでに八ッ場ダム住民訴訟原告側が開示させただけでも、河道条件を現状のままで設定すれば基本高水は一万六七五〇トンに下がると国交省自らがはじき出した計算結果がある。前提が違えば、結果は三%減に留まらず、大きく異なることは明らかだからだ。

 過剰なダムを根拠付けてきた基本高水の正当性が利根川で崩れれば全国の治水目標が瓦解する。国交省にとって八ッ場ダムは最初で最後の砦である。同省にとってのネガティブ材料も提示し、非公開資料を公開し、操作要因を排せるかどうか。これが「大臣を操作する河川官僚」対「大畠章宏新国土交通大臣」の最初の闘いとなる。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、1月14日号)

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