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「断固上映を」劇場関係者駆けつけ 映画『ザ・コーヴ』シンポ開催

2010年6月29日5:55PM

「朝八時頃、私はまだ寝ていましたが玄関をどんどんと叩く音がするんです。起きた時にはすでに家中が囲まれている状態でした」 
 映画『ザ・コーヴ』の配給元であるアンプラグド社の加藤武史社長は、自宅に右派系団体が押し寄せてきた時のことをこう話す。
 二一日、東京弁護士会館で行なわれた映画『ザ・コーヴ』シンポジウム(主催・東京弁護士会、第二東京弁護士会)には、田原総一朗氏(ジャーナリスト)、崔洋一氏(映画監督)、石坂啓氏(漫画家、本誌編集委員)などに加え映画『靖国』の時にも上映を取りやめず、今回も「断固上映」を訴える劇場関係者が駆けつけた。
 加藤氏が「個人の自宅にまで押しかけ抗議行動することが {表現の自由} の範疇に収まるのか疑問」と投げかけると、飛び入りで参加した鈴木邦男氏(作家、一水会顧問)は「自宅にまで押しかけることは街宣の域を出ている。テロだ」と喝破した。
 一方、田原氏は映画について「不愉快な映画。でも面白い」と感想を述べ、さらに「こういうシンポジウムに右翼を呼んで討論がしたい。彼らも表現の場がほしい」と右派系団体の抗議行動にも一定の理解を示した。
 しかし、名古屋シネマテークの平野勇治氏は「地方に行けば非常に少ない人数のスタッフで運営している。ちょっとしたトラブルで上映中の映画に悪影響が出る」と地方劇場のおかれた窮状を訴えた。鈴木氏も「弱い者いじめだ。そういう映画館に対して頑張ってくださいというのは無責任。私たちが直接映画館に行って彼らを守るべき」と声を荒らげた。
 映画の内容について「事実に反する箇所がある」との質問に崔氏は「映画なんてそもそも嘘っぱち。正確さを求めるなら黒澤明も批判しなければならなくなる」とした一方で「西洋人のしぶとさが出ている」と作り手側にある側面にも言及した。
 他にも「私たちの仕事は見る側に判断を委ねるもの」(神谷雅子・京都シネマ代表)、「恐怖感もあるが、スタッフが『靖国』の時の経験を活かして、冷静な対応をしている」(長澤純・フォーラムネットワーク)などの意見も出た。

(野中大樹・編集部)

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