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カメラマンの島崎ろでぃー氏を沖縄県警が逮捕・勾留――取材妨害の「不当逮捕」に批判

2016年12月12日11:39AM

写真集『ひきがね』はURL korocolor.com/news/201611-rodyshien.html へ。

写真集『ひきがね』はURL korocolor.com/news/201611-rodyshien.html へ。

国会前で、韓国で、沖縄で、あらゆる不条理に抗う市民の姿を切り取り、本誌にもその臨場感溢れる写真を多数提供してきたカメラマンの島崎ろでぃーが11月17日、東京の自宅で沖縄県警に逮捕された。那覇に移送されて19日から現在に至るまで与那原警察で勾留されている。容疑は8月25日に高江で起きたとされる「公務執行妨害」事件で防衛局の職員に対して暴行を働いたというものである。しかし、ろでぃー本人はこの容疑を全面的に否認している。「公妨」であるにもかかわらず現行犯ではなく、約3カ月が経過してからの逮捕は、終始国家権力と対峙し続けてきたジャーナリストを狙って拘束することを目的としたものではないかと批判の声が上がっている。

ろでぃーは4月6日の『北海道新聞』に次のような文章を寄せている。「カメラを意識させることで、漠然としていた怒りや訴えが、しっかりとレンズとその向こうにある社会へ向けられるようになる」「カメラは武器である。人を傷つけることもあれば、守ることもある。/市民運動の場で権力の監視というのはカメラマンの仕事の一つではないかと思っている。/差別・排外デモに抗議する市民と警察の間に立って不当な逮捕をさせないのはとても大事なことで、たとえ証拠不十分で不起訴になったとしても、逮捕されるのは市民にとって大きなダメージになる。実際、そこにカメラがあることで警官が落ち着きを取り戻すといったシーンが何度もあった。/沖縄ではそんな役割をマスメディアのカメラマンも当然のようにやっているのを見て、自分が間違っていないことを確信もした」。

高江でヘリパッド移設工事に反対する市民に対する機動隊員の狼藉は「土人」発言でも明らかになったようにまさにメディアが監視をしなければどこまでも暴走を続ける恐れがあった。11月26日朝、高江を訪れたときに抗議の市民からはこんな声を聞いた。「平気で通行を妨げたり、笑いながら、罵ってきたり。ここが遠いこともあってやりたい放題だったよ。那覇からも離れた陸の孤島で憲法が機能していない」。ちょうど前日の25日、元小学校の教員でオバマ大統領に10万通のハガキを出したことで知られる小橋川共行さん(74歳)はN1テントで昼食をとり、抗議の現場に戻ろうと移動したところ、乗っていた車を停められて職質を受けた。「この先に何をしに行くのか?」という問いに対して「集会に参加する」と答えるとそこで通行をストップさせられてしまった。「国民が保障されている集会の自由を妨げるのか」という声も全く無視し、集会が終わるまで留め置かれてしまった。市民を選別し、移動の自由すら奪ってしまう。かような非道を見られては困るのが、権力側である。ろでぃーの逮捕は8月20日に『琉球新報』と『沖縄タイムス』の記者が機動隊に強制的に排除され、一時拘束された事件の流れにあると考えるのが自然であろう。地元2紙の記者は同日アスファルトに座り込んだ住民を機動隊が抱え上げ、引きずって排除する様子を写真撮影していた(『琉新』の記者は排除される際に腕章を示し、記者であることを訴えても解放されずに拘束されたという)。

【「長い闘いになります」】

ろでぃーの勾留は11月28日に延長が決まり、12月8日まで続く。「高江ではすぐに逮捕状が出されてしまう現状です。起訴になるか不起訴になるかはまだ読めない」(担当弁護士)。今回の逮捕については、「ろでぃーさんの取材活動を妨害することで国民の知る権利を妨げている。許せない」と声を上げた写真集『ひきがね』版元の出版社「ころから」がチャリティ販売し売り上げの全額を本人に寄付することを宣言している(詳細は左上写真の「ころから」HPへ)。

最後に勾留されているろでぃーからのメッセージをここに。

「私は元気です。長い闘いになります。たばこが吸えずにつらいですが、全く心配はいりません」

抗議する人間の気高さ、尊厳をそのまま映し出すあのろでぃーの写真を再び目にする時が一日も早く戻ってくるように。

(文中一部敬称略)

(木村元彦・ジャーナリスト、12月2日号)

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