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8月15日に高市総務相と丸川五輪担当相が靖国を参拝――「追悼」も「反省」もない安倍首相

2016年8月29日11:18AM

新党を立ち上げると宣言した桜井誠氏。政治活動のツールはSNSだ。(撮影/野中大樹)

新党を立ち上げると宣言した桜井誠氏。政治活動のツールはSNSだ。(撮影/野中大樹)

8月15日の敗戦記念日。東京都千代田区にある靖国神社には、安倍内閣の高市早苗総務相と丸川珠代五輪担当相が参拝し、安倍晋三首相本人も「自民党総裁」の肩書きで玉串料を奉納した。

一方、参拝は「心の問題」だとして毎年8月15日に参拝してきた稲田朋美防衛相は、13日からジブチ視察の外遊に入った。公務を理由に、支持層である右派へのメンツを保とうと必死だ。

靖国神社とその周辺では、今年も威勢のいい発言が相次いだ。青年フォーラム主催の講演会には、軍事ジャーナリストの井上和彦氏が登壇し、「近隣に反日の国がふたつあります。国名は言えませんが、中国と韓国です」などと叫ぶと、拍手が沸いた。

弊誌は昨年12月4日号で、氏が防衛産業である双日エアロスペース(株)に勤めながら、それを伏せて「ジャーナリスト」として活動していることを批判している。

当日、現場が騒然となったのが、

反天皇制運動連絡会(反天連)のデモを日の丸を掲げたグループが「迎撃」(グループの一人)する場面だった。先の東京都知事選に立候補し落選した桜井誠・在日特権を許さない市民の会初代会長がマイクをにぎり、例によって中国や韓国をののしった上で、「来月、新党を立ち上げる」とぶちあげると歓声が上がった。

日の丸を持つグループがやり玉にあげたのが、終戦直後、連合国軍総司令部(GHQ)が日本に敷いたWGIP(War Guilt Information Program)だ。日本民族に贖罪意識を植え付け、独立心を奪ったプログラム、と主張する。

だが、彼らのすぐ後ろには、子宮頸がん予防ワクチンなどで日本市場を手中に収める米国の大手製薬メーカーMSD(株)のビルがそびえ立つのに、日の丸グループは見向きもしない。近辺のマクドナルドも通常営業している。日本の戦後政治、経済を強く規定してきた米国の企業や軍事基地は黙認し、中国や韓国、日本のリベラル派に敵意をむき出す彼らの言動にこそWGIPの妙味がある。

【「過去を顧み、深い反省」に示された気持ちとは】

全国戦没者追悼式で式辞を読んだ安倍首相は、「祖国を思い、家族を案じつつ、戦場に斃れられた御霊」「皆様の尊い犠牲の上に、私たちが享受する平和と繁栄がある」と強調した一方で、加害の事実には触れず、「哀悼」も「反省」も口に出さなかった。

「過去を顧み、深い反省」と踏み込んだのは、8月8日に生前退位の気持ちを示した天皇だった。参議院選挙の結果が出て、秋の臨時国会にも憲法審査会が動き出さんとするこのタイミングでの言動に、安倍内閣による改憲の動きを牽制しているという見方もある。

参拝客は例年通り中高年とりわけ男性の割合が高い。目立ったのはスマートフォンを操りながら参列する人の姿だ。写真を撮り、SNSにアップする作業をこなしながら順番を待つ人も少なくない。靖国に英霊が眠るという“物語”は、戦中は学校や隣組が、戦後はマスメディアが、そして今はSNSが担っているのかもしれない。

(野中大樹・編集部、8月19日号)

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