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ヘイト・スピーチ条例が成立――大阪市が全国に先駆け

2016年2月3日10:17AM

条例反対の街宣に抗議し「レイシズムノー」を掲げる市民。(1月15日、大阪市役所前。撮影/平野次郎)

条例反対の街宣に抗議し「レイシズムノー」を掲げる市民。(1月15日、大阪市役所前。撮影/平野次郎)

ヘイト・スピーチ(差別煽動表現)の抑止を目的とする全国初の条例が1月15日、大阪市議会で成立した。ヘイト被害に直面している在日コリアンたちは、遅れている人種差別撤廃施策推進法案の国会審議にも弾みがつくと期待する。

条例によると、ヘイト・スピーチは特定の人種や民族の属性をもつ個人や集団を社会から排除し、憎悪や差別、暴力をあおる目的で侮蔑し誹謗中傷するなどの表現活動とし、法令として初めて定義づけた。市長が委嘱する委員でつくる審査会が被害者の申し立てなどによって調査し、市長がヘイト・スピーチと認定すれば、表現内容の拡散防止措置をとるとともに活動団体の名称や個人名を公表することで抑止を図る。

条例案は昨年5月に橋下徹前市長が市議会に提案したが、「表現の自由との調整が難しい」などの意見が出て継続審議になり、成立が危ぶまれていた。ところが11月の市長選で橋下市政を継承する吉村洋文市長の誕生を機に、与党の大阪維新の会が条例成立へ向けて修正案づくりを進めた。審査会委員の委嘱について市議会の同意を要件とし、被害者の訴訟費用を支援するとの規定を削除するなどの修正案を吉村市長が議会に提出することで、自民、公明、共産、「みらい」を加えた5会派が全会一致で修正案に賛成する見通しとなった。しかし最終段階で自民が反対に回ったため、15日の本会議で採決となり賛成多数で可決された。

本会議開会中に傍聴席から条例反対とみられる男がカラーボール2個を議長席に向けて投げつける騒ぎがあるなど、最後まで波乱含みだった。

市民の手による条例案を大阪市に提案する中心となった多民族共生人権教育センターの宋貞智事務局長は「在日コリアンが多く住む大阪からヘイト・スピーチは許さないとの姿勢を打ち出す条例を発信することの意義は大きい」と喜ぶ。

(平野次郎・フリーライター、1月22日号)

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