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原発差し止め判決出した元裁判長――「最高裁の強い意思感じる」

2011年9月2日3:40PM

 二〇〇六年三月、金沢地裁で北陸電力・志賀原発二号機(石川県志賀町)の運転差し止めを命じる判決を出した当時の裁判長・井戸謙一氏(現・弁護士)が八月二一日、愛知県名古屋市内で講演した。

 この判決は、北陸電力による地震の想定が不十分で、原発敷地内で想定以上の地震が起こった場合、多重防護が機能せずメルトダウンなど「過酷事故」が起こる危険性を指摘。稼働したばかりの原発の運転差し止めを命じたもの。

 井戸氏は判決前の心境を「言い渡した後の社会的な反響を考えると、眠れないこともあった。判決起案が形を成してきてからは『これ以外の結論はない』と確信が生まれ、心の迷いがなくなってきた」と振り返る。全国初の原発差し止め判決となり、予想以上の反響があったが「決して突飛な判決でも、特別に思い切った判断でもない。当事者の主張・立証を虚心坦懐に見れば、自然に出てくる結論だ」と述べる。

 とはいえ、運転差し止めなどを求めた原発訴訟で、これまで原告が勝訴したのは二件しかない。しかも、二件とも上級審で逆転されている。井戸氏はその背景に、「最高裁の強い意思を感じる」という。

 裁判官についても「過酷事故が起こる現実感が持てず、国がしていることに対する信頼感もあった。運転を差し止めるとなったら、電力会社に莫大な損害をもたらす。そういう判決を下すことにおののきのような気持ちがある」と心理を分析する。

 これから、原発訴訟が全国で相次ぐことが予想される。井戸氏は「国が定めた安全審査基準が事実をもって裏切られた。国がしたことでも信頼するわけにはいかない、という感覚が裁判官に生まれてくる。(運転)差し止めが多数の市民の意思であると感じ取ることができたら、一歩踏み出そうとする裁判官の背中を強く押すことになる」と今後の変化に期待を寄せた。

(澤村慎太郎・記者ネット名古屋、8月26日号)

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