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「恵庭OL殺人事件」再審請求棄却を弁護団が批判 
「最高裁の任務放棄」

木村嘉代子|2021年5月11日6:03PM

4月15日、札幌市内での記者会見で語る伊東秀子弁護士(中央)ら。(撮影/木村嘉代子)

2000年3月に北海道恵庭市で起きた「恵庭OL殺人事件」で、殺人や死体損壊の罪で懲役16年が確定し、服役した大越美奈子さん(被害者の元同僚)の第2次再審請求の特別抗告審について、最高裁判所第2小法廷の菅野博之裁判長は4月12日、棄却を決定した。大越さんは逮捕から一貫して無罪を訴えたが、複数の情況証拠のみで有罪判決が確定した。

女性が焼死体で発見された同事件では「灯油10リットルの燃焼で被害者の遺体のような炭化や9キログラムの体重減少が生じるか」が重要な争点の一つだ。検察側の「体脂肪の自然燃焼」の主張に対し、弁護団は専門家の燃焼学鑑定や実験から「科学的にありえない」と反論。しかし裁判所は一審の確定時から検察側の説を「可能性がある」と容認し続けている。

第2次再審請求では死因は窒息死ではないとする法医学鑑定と、うつ伏せから仰向けに姿勢を変えて焼損したとする鑑定の新証拠を提出したが、札幌地方裁判所(請求)も札幌高等裁判所(即時抗告)も科学的根拠に基づく具体的な説明をせずにすべて否定した。

最高裁は特別抗告の審議に2年半以上費やしたが、今回も科学的判断を一切示さず、単に「法令違反、事実誤認の主張であって」特別抗告の理由に当たらないとして再審開始を退けた。新証拠の評価も示さなかった。

15日に札幌市内で開いた記者会見で、21年間この事件に関わってきた伊東秀子弁護士は「最高裁としての任務を放棄している」と無念を滲ませた。再審を支援する日弁連も声明で「新旧全証拠の総合評価を行なっておらず『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の鉄則にも反する」と批判した。

第3次再審請求は本人の意向を踏まえて決めるという。大越さんは弁護団を通じて、「私は無実。冤罪を晴らしたいという気持ちは失っていない」とコメントしている。

(木村嘉代子・フリーライター、2021年4月23日号)

 

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