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選択的夫婦別姓の意識調査
7割が夫婦別姓に理解

宮本有紀|2021年1月14日10:56PM

現在審議中の第5次男女共同参画基本計画に選択的夫婦別姓導入が盛り込まれる可能性も出てきており、別姓実現への機運が高まっている。選択的夫婦別姓・全国陳情アクションと早稲田大学の棚村政行研究室は合同で選択的夫婦別姓に関する意識調査を10月に実施。全国47都道府県で20~50代の男女7000人から回答を得た。

11月18日に発表された結果はA「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦も同姓であるべきだ」とする人は全体で14・4%、B「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦は同姓でも別姓も構わない」が35・9%、C「自分は夫婦別姓が選べるとよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」が34・7%と、B+Cの容認派が70・6%になることがわかった。

同日の会見で棚村政行教授は「自分は同姓を選ぶが他の人の選択は自由という人がどれだけいるかを確認したかったが、多くが別姓賛成という結果になった」と解説。また、別姓が選べないために結婚を諦めたことや事実婚にしたことがある割合は全体で1・3%、最も多い20代男性で2・4%あった(県別では福井の20代男性の50%が最多、山口の30代男性33・3%、大分の20代男性33・3%と続く)ことから、「選択的夫婦別姓は女性の問題と考えられがちだが男性の問題でもあることがわかる。法的な制度が障害になって法律婚への道が閉ざされるというのは重大な問題」と述べた。

「自分らしく暮らせる働ける、そういう環境を作ることが国際競争力や経済成長、社会全体の活性化につながる。選択的夫婦別姓制度の実現もよりよい環境づくりの一つ」と話す棚村政行教授。(撮影/宮本有紀)

夫婦別姓を選択できるよう民法を改正することに賛成か反対か、という世論調査はこれまでも何度かされてきており、2017年の内閣府の調査では賛成が42・5%で、通称使用容認が24・4%。ただ、回答者の45・5%が60歳以上で50代以下に絞ると現行法維持の割合は16・8%で選択制導入賛成50%となる。

 

今回の調査は内閣府の調査と同じ内容ではないため、結果を単純に比較できないが、「自分の選択」と「他人の選択」について分けて聞いたことに意義がある。設問について全国陳情アクションの井田奈穂事務局長は「選択的夫婦別姓に賛成か反対かと聞かれたときに、自分のことを聞かれているのか、他人のことを聞かれているのかがわかりづらいところがある。以前『東京新聞』で〈自分は夫婦同姓がいい、他の人も同姓であるべきだ〉〈自分は夫婦同姓がいい、でも他の人が別姓を選択するのは自由だ〉と自他の区別をつけた設問でアンケートをとっていたので、この方法を参考にした」と話す。

「各地に陳情に行くと、自分の地域には(別姓を望む)当事者がいないということを、あちこちの議員さんがおっしゃる。そんなわけはないので47都道府県の世論をデータで示したかった」と話す全国陳情アクションの井田奈穂事務局長。(撮影/宮本有紀)

また、回答者を20~50代としたことについて、家族法の研究者、二宮周平・立命館大学教授は、「19年の厚生労働省の調査を全国陳情アクションがまとめたら96・96%が20代から50代で婚姻している。今回の調査はまさに婚姻する人たちの気持ちを表したデータと言える」と評価。そのうえで、「自分は夫婦同姓がよい」とした人の自由記述に「夫婦同姓が日本古来の伝統」とする意見が散見されたことについて「これは事実に反する。庶民が名字を名乗ることができたのは1870年から。1891年に民法が制定され、戸主および家族は家の氏を称するとされた。女性は婚姻して夫の家に入り夫の家族となることから、その氏を称したわけで、家制度が結果として夫婦同姓をもたらした。古来の伝統というのであれば武士階級は夫婦別姓。源頼朝と北条政子が典型例だ」と指摘した。

会見には若い世代も登場。「現状、女性が改姓する方が多いとなると、僕自身が誰かの姓を奪うかもしれないという立場にある以上黙ってはいられない」とマイクを握った20代の男性、福井周さんは、アンケートで同姓を選ぶ理由として「家族の一体感」「結婚する上での覚悟として同姓(改姓)は正しいと思う」という記述があったことに対し「姓を変えるのは女性が圧倒的に多いのに、変えることを覚悟するって、じゃあ男性側は何を覚悟しているんだって。非対称性があって、そこに明確に権力が働いているのに、それを覚悟だ、一体感だと言ってしまうことが家族なのかなと僕は疑問」などと話した。

県別では、B+Cの割合が最も多かったのは宮崎で76・9%。最も少なかった鳥取でも57・2%あった。自分も他人も同姓であるべきとするAが最も少なかったのが沖縄で7・4%、最も多かったのが愛媛の25・4%。その愛媛でもB+Cは59・7%なので、容認派のほうが多い。

この調査結果は現在上告中の別姓訴訟でも資料にするという。

(宮本有紀・編集部、20年12月4日号)

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