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『朝日新聞』広告拒否問題で謝罪 
出版社抗議で一転掲載

岩本太郎|2019年7月11日12:15PM

【『朝日』側は弁明に終始】

この声明に対し『朝日新聞』東京本社で紙面の広告を担当するメディアビジネス局と広告審査部はほどなく「掲載見送りに至った判断、経緯を調べ、改めて関係者で協議」した結果として、前記の掲載拒否は不適切であり、広告は「掲載すべきものであった」との結論を表明。6月7日には同社メディアビジネス第一部長の林田一祐氏ほか2名が出版協の水野会長とインパクト出版会をそれぞれ訪問し、報告と謝罪を行なった。担当者により広告掲載不可の判断がされた場合、その妥当性を相互にチェックする仕組みがあるのに今回は「それが十分機能しなかった」との説明だったという。12日にはメディアビジネス局の金山達也局長による文書も送られ、結局『鎮魂歌』の広告は6月22日付「読書」面下に掲載される形で決着となった。

とはいえ一部の文言の修正要求ならまだしも広告の掲載自体を「そういう本だから」と却下しようとしたことについては「軽く考えないでほしい」と水野氏も伝えたという。『朝日新聞』は今回の件についてはその後に公式見解などは出していないが、出版協やインパクト出版会がこの件に関してネット上で報じている経過説明や見解には異議を唱えない旨を本誌の取材に対して回答した。

服役中の人物が事件に対する贖罪の思いで書いた本の広告が、結局名前も明かされなかった一担当者の曖昧な判断で抹殺されかけたというのだからひどい話だ。犯罪者の手記公表をめぐっては、他にも1997年の神戸連続児童殺傷事件の加害者男性「元少年A」が15年に上梓した『絶歌』の出版の是非が議論された件などが思い浮かぶが、背景にはこうした過去の事例への議論や検証がメディア業界内できちんと共有されていないこともあるのではないか。今回はその意味でも結果的に掲載拒否が撤回されただけで良しとせず、後への反省材料として活かすべきケースであろう。

(岩本太郎・編集部、2019年6月28日号)

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