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築地の完全破壊を目指す?
卸売市場法改正案が国会に

岩崎眞美子|2018年5月15日11:11AM

トークセッションで、右から中澤誠氏、1人おいて山口タイ氏。約200人の参加者で会場は埋めつくされた。(撮影/岩崎眞美子)

4月14日、東京都中央卸売市場内にある築地市場講堂で、シンポジウム「卸売市場法が変わると私たちの食はどうなるの?!」が開催された。今期通常国会に提出されている卸売市場法改正案が実現されれば、生産者・消費者重視だった生鮮食品の流通の仕組みが破壊され、大資本による流通の支配が進む可能性がある。

前半では、築地仲卸業者で、東京中央市場労働組合執行委員長の中澤誠さんが登壇。卸売市場制度の概要と改正案の問題点に触れた。

「卸売市場法はこれまで2回の大きな改正がありました。1999年にはセリ入札原則が撤廃。商物一致原則も大幅に緩和され、2004年にはさらに規制緩和が進み、卸業者の第三者への販売が可能になった。そして今回は、市場制度そのものを撤廃しようとしている」(中澤氏)

現在、築地には、全国各地から水産物を仕入れてくる「卸」が7社ある。その卸が仕入れてきた品物を、買い付けて小売店に売るのが、中澤さんら「仲卸」の仕事だ。

「卸は全国から仕入れてきた生産物を少しでも高く売るのが仕事で、つまり生産者の味方。仲卸は、良い魚をできるだけ安く仕入れるのが仕事で、こちらは消費者の味方。どちらも自分の儲けのためにやっているけれど、結果的にそれが生産者と消費者を守ることに繋がる、非常に優れたしくみです」(中澤氏)

しかし、度重なる規制緩和で今では卸業者は第三者に商品を販売することも可能になり、卸―仲卸の間で保たれていた適正価格は破壊された。99年の改正では制度としての「セリ」がなくなり、「質」に値段をつけるシステムから「量」に値をつける「相対取引」が主流に。良い品物に良い値がつく「築地ブランド」は生産者たちのモチベーションに繋がったが、今は質よりも量をさばいて儲けを出すシステムがメインになった。結果、大資本を持つ者が残り、質の良いものを少量扱う魚屋や寿司屋の数は年々減り続けている。

「今回の改正案は市場法の廃止を視野にいれています。鮮度が勝負の生鮮食品は、規制がなければとたんに生産者が足下を見られる。だから規制が必要だった。規制緩和が新しいわけではない、むしろ、規制される以前の野蛮な時代に戻るということです」(中澤氏)

【豊洲に8割が納得せず】

今回、改正が成れば、築地市場が守ってきた「卸売市場」の適正価格システムは骨抜きにされる。「時代遅れ」の卸―仲卸システムをこの機会に一掃し、「新しいビジネスモデル」に作り替える。その象徴が、豊洲新市場への移転だ。築地の仲卸業者の数は現在500余り。この数年でその数は300ほど減った。豊洲に行くためには引っ越し費用や場所代、様々な設備投資などの負担が重なるため、これを機会に店を畳む業者も少なくない。

後半のトークセッションでは、築地市場で働く女性たちでつくる「築地女将さん会」会長の山口タイ氏も登壇。この4月、築地の全仲卸業者を対象に行なったアンケート結果を発表した。

「豊洲新市場の開場には80・4%が『納得していない』と答えています。豊洲市場に行って私たちに何か良いことがあるのでしょうか。何もないと思います」(山口氏)

岩手県生協連顧問の加藤善正氏は、地方で進むコミュニティや商店街の崩壊について述べ「この流れは過去の卸売市場法の改悪と連動しており、今回がその総仕上げ」と語った。新日本婦人の会東京都本部の岡林奈緒子氏も「一番得するのは誰かを考えれば、市場法改定の狙いがわかる」と指摘した。

仙台市中央卸売市場水産物卸協同組合の菅原邦昭事務局長は、「生鮮食料品の価格決定は誰かが価格の決定権を持ったり、価格を操作したりしてはならず、需要と供給の関係で決めるべき。これは経済学で言う『完全競争』であり、それが卸売市場法の本来の理念なのです。それを実現しているのが築地市場。そのしくみをこれからの日本の生鮮食料品市場で発展させていくべきだ」と強く訴え、場内からも大きな拍手が起こっていた。

(岩崎眞美子・ライター、2018年4月27日号)

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