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渋谷・宮下公園の解体工事開始 市民無視で商業施設の屋上へ

8月1日、封鎖された宮下公園前で、工事中止を呼びかける市民ら(手前)。(撮影/渡部睦美)

デモの発着地点や集会場などとして知られる東京・渋谷の宮下公園。この敷地に3階建て商業施設を造り、公園を「新宮下公園」として屋上に整備するための工事が進められている。渋谷区から整備事業を請け負ったのは三井不動産で、同敷地に17階建てのホテルも併設する。三井不動産はこれらの施設を東京オリンピックのある2020年までに整備し、その後30年間、区に借地料6億300万円を毎年払う(工事期間中も借地料の3分の1を毎年払う)契約を結んでいる。区は、費用負担せずに新しく公園を整備できることなどを利点とするが、なぜ公園を屋上に造るのか。根本的な疑問が噴出し、解決しないまま、8月1日に宮下公園の解体工事が始まった。

「一番の問題は、宮下公園の耐震性に問題があるのを区は少なくとも08年に把握していたのに、耐震補強の工事をしてこなかったことです。ところが急に今回の整備事業でそれを大きな理由の一つに挙げ始めた。耐震性を考えるなら、公園は地面の上に整備すべきです」。新宮下公園に反対する渋谷区民の渥美昌純さんは、こう疑問を呈した。

宮下公園は1953年に開園。66年に公園下に駐車場が整備され、以後、駐車場の躯体は建て替えられていない。2008年に駐車場の管理会社が行なった耐震診断調査では、「耐震性に疑問あり」という診断が出ていた。しかし区は、この後にも先にも区独自で耐震調査をしておらず、さらに翌09年にはナイキジャパン(以下、ナイキ)と公園の命名権契約を締結している。結局、ナイキは公園をリニューアル工事したものの、耐震補強工事は行なわなかった。これについて区の緑と水・公園課は、「(ナイキに)耐震工事の依頼はしておらず、『耐震性に課題がある』ということを情報共有しただけ」としている。

渥美さんは、「耐震性に問題があるところに、クライミングウォールやスケート場などの建造物を造った。区もナイキもデタラメすぎる」と指摘する。工事に際しては、区が野宿者らを公園から強制排除する事態も起き、後の裁判で区には賠償金支払い命令が出たほか、ナイキとの契約も地方自治法違反だとの判決が下された。

この裁判中の14年、ナイキが行なったリニューアル工事から数年しか経っていないにもかかわらず、区は新宮下公園を整備する事業者を募集し、翌15年に三井不動産を事業者に決定した。しかし、これにナイキが激怒。今年3月31日付で命名権契約は解除となった。契約解除に至る交渉過程の文書によれば、ナイキは、商業施設の上に公園を造るのは耐震補強に「必要な限度を著しく超えて」いると区を批判している。

【市民を無視する区と三井】

ナイキでさえ度を超していると非難した新宮下公園の整備計画は、04年の都市公園法改正によって創設された「立体都市公園制度」に基づくものだ。同制度は、建物の上部に公園を建設することを可能にした。ただ、同法の運用指針には、「用地取得に膨大な事業費を要する」都市部において新たに公園を造る際に、この制度が活用されることが望ましいと記されていて、基本的には新規公園が想定されていることがわかる。

同法の運用指針はこのほか、「緑地空間の確保」も重要な点に挙げている。しかし、新宮下公園を整備するに当たっては、現在宮下公園にあるケヤキの大木30本などはすべて伐採される予定だ。区は、この代わりとして天蓋にツタをからませ、ダイナミックなグリーンチューブを形成するとしている。

さらに、新宮下公園は、災害時の一時避難場所に指定もされている。それにもかかわらず商業施設の上というアクセスに不便な位置に公園が整備されることには、複数の住民や区議から何度も懸念が出た。災害時の一時避難場所にするのであれば24時間誰でもアクセスできる環境にすべきだが、商業施設が閉店してしまえば屋上の公園にアクセスできなくなるのではないかなどといった疑問も出ている。だが、区は「容易に利用できるアクセスを確保」すると述べるばかりで、具体的な設計図はいまだ出来上がっていない。

こうした懸念や疑問が解消されないまま、整備事業が区議会で審議中の3月27日、区は突然宮下公園を封鎖し、再び野宿者らを強制排除した。「ダイバーシティ(多様性)」を掲げる渋谷区の長谷部健区長は野宿者らに対して、「平穏な話し合いの場を持つことは非常に困難」と排他的な態度だ。三井不動産に至っては、公園閉鎖の説明や工事中止などを求める市民からの申入書を受け取らずに、破棄するという姿勢を見せている。6月22日に区と三井不動産が定期借地権契約を結んだ際、宮下公園は行政財産から一般財産に変更もされており、企業による公園の私物化が懸念される。

(渡部睦美・編集部、9月1日号)