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「特区の生みの親」竹中平蔵氏が疑われる原因(佐々木実)

加計学園問題で脚光を浴びる国家戦略特区は別の問題も抱えている。衆議院の地方創生に関する特別委員会は国家戦略特区法の改正案を可決した5月16日、「附帯決議」として次の文言を盛り込んだ。

〈民間議員等が私的な利益の実現を図って議論を誘導し、又は利益相反行為に当たる発言を行うことを防止するため、民間企業の役員等を務め又は大量の株式を保有する議員が、会議に付議される事項について直接の利害関係を有するときは、審議及び議決に参加させないことができるものとする〉

野党議員の念頭にあったのは国家戦略特区諮問会議民間議員の竹中平蔵氏。与党内にも懸念の声はあった。そもそも国家戦略特区制度を提唱したのは竹中氏なのだが、「特区の産みの親」が疑われる原因は特区で優遇される企業との深い関係にある。

特区諮問会議は東京都などで外国人による家事代行を解禁し、参入事業者のひとつにパソナを選定した。竹中氏が取締役会長を務めるパソナグループの子会社だ。兵庫県養父市の農業特区では、竹中氏が社外取締役を務めるオリックスの子会社を選定している。

附帯決議については雑誌の記者から私も意見を求められたが、不思議なことに、その記者もふくめ関心をもつ人々は「もうひとつの企業」を見落としている。

竹中氏と森ビルの関係はずいぶん古い。小渕恵三政権の経済戦略会議の委員となった際、同じく委員だった創業家2代目の森稔氏の知遇を得た。やがて竹中氏は森ビルの文化事業を担う「アカデミーヒルズ」の理事長に就任する。森稔氏の名声を高めた六本木ヒルズが完成したとき、竹中氏は小泉政権の現職閣僚だったが、上棟式に出席している。

現在はアカデミーヒルズ理事長のほか、森記念財団の理事も務める。同財団の理事には森ビルの辻慎吾社長が名を連ねる。竹中氏は同財団の都市戦略研究所の所長も兼務している。国家戦略特区制度は「世界一ビジネスのしやすい国際都市づくり」を目的とするので“研究対象”である。

実は、竹中氏が民間議員を務める特区諮問会議が扱う最大規模の事業が東京都心の再開発だ。特区で手がける都市再開発事業は30あまりあるが、特区諮問会議はそのうち5つのプロジェクトの事業主体として森ビルを選定した。

森ビルの辻社長は今年2月10日、国家戦略特別区域会議に出席している。司会役は加計学園問題で名前が取り沙汰された藤原豊内閣府審議官(当時)で、森ビルのプロジェクトに関して、着工前の各種行政手続きを大幅に簡素化すること、設備投資減税の措置を講ずることなどを報告。辻社長は「この国家戦略特区制度と小池(百合子東京都)知事の都市政策のもと、政官民が一体となって異次元のステージとスピードで世界の人々を引きつけるような都市づくりを進めていかなければならない」と語り、「引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします」と結んだ。

この日の会議に竹中氏の姿はなかったが、森ビル社長が謝意を伝えるべき相手が「国家戦略特区産みの親」であることは贅言を要しないだろう。

(ささき みのる・ジャーナリスト。7月21日号)