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都連会長人事にみる「安倍一強」の終わり(佐藤甲一)

東京都議会議員選挙の歴史的惨敗、『読売新聞』をはじめ大手主要紙における世論調査での支持率急落など、安倍政権をめぐる情勢は通常国会閉会からわずか1カ月余りで、激変した。

8月3日には内閣改造を断行する予定だが、目論み通りに支持率回復につながる見込みは薄い。なぜなら、支持率低下の原因が安倍晋三首相の強権的な政治姿勢と利害関係者を優遇する政権の隠蔽的な癒着的体質を、国民の7割近くが「信用おけない」と感じているからに他ならない。

「信用おけない」人物が断行した人事が好感を持って迎えられるはずがない。自民党内の各派閥ではこうした環境変化に即座に反応している。それらは単に「ポスト安倍」をめぐる動きという近視眼的なものにとどまらない。

大敗を受けて対立が始まった自民党東京都支部連合会の新会長人事こそ、注目に値する。過去最低の獲得議席23という結果を受け、下村博文都連会長以下、役員が引責辞任の意向を表明。再建を担う後任都連会長に目されているのが安倍首相の出身派閥、細田派の丸川珠代五輪担当相と、石破茂元自民党幹事長の側近の鴨下一郎元環境相だ。つまり「ポスト安倍」の前哨戦が始まったと言える。

だが、ここで見落とせないのは、平将明衆院議員ら石破系若手国会議員が提出した「新会長の3条件」である。(1)上の操り人形にならない、(2)小池百合子都知事と対話できる、(3)公明党との関係修復――という3条件のうち、(1)の「上」とは党本部を意味するから、「反安倍」の旗幟を鮮明にするということだろう。

一方、(2)と(3)の意味は、都政においては小池都知事と小池与党を敵視せず、当面は是々非々で臨むことができる執行部、ということになる。つまりは石破系(つまり石破氏)は「親小池」路線に進むということだ。

これが「ポスト安倍」をめぐる前哨戦にとどまらないのは、その任期との兼ね合いにある。自民党総裁の任期は来年の2018年9月、そしてその次は21年9月となる。支持率低落に見舞われた安倍首相の総裁3選はもはや決して「既定路線」ではない。安倍首相の足元の揺らぎにより、3カ月前までは安倍支持を打ち出した岸田文雄外相も立候補の可能性が急浮上したと言える。

総裁選が石破vs.岸田の闘いになれば、党内情勢では岸田有利、石破不利との見方が有力だ。安倍氏が既定路線通り出れば、岸田氏は安倍支持に回る可能性もあり、どちらにしても石破氏は不利な闘いを強いられる。石破総裁の目が出てくるのは21年の総裁選とも言える。

そして21年秋と言えば、小池都知事が知事2選目を果たし(20年7月が次期知事選)、無事、東京オリンピック・パラリンピックを終えた1年後だ。そろそろ小池氏の国政復帰が視野に入ってもおかしくない。そして小池知事とこれまで気脈を通じていると見られたのが新進党や日本新党で同じ釜の飯を食った石破氏であり、鴨下氏なのである。

東京都連会長選挙は21年までを見通した自民党権力闘争の始まりであり、そこに小池新党の国政進出という再編がらみの要素も加わる。「ポスト安倍」にとどまらない、重層的な権力闘争の構図が顕在化することこそ、皮肉にも自民党の活力が戻りつつあり、「安倍一強政治」の終わりが始まった証左、と見ることができるのである。

(さとう こういち・ジャーナリスト。7月21日号)