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道徳懇・鳥居座長が問題発言――「指導に自己犠牲を」

2013年12月5日5:59PM

「道徳の指導内容に自己犠牲と我慢を明記するのがよい」。戦前と見紛う発言が鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問(七七歳)の口から飛び出した。文部科学省が一一月一一日に開いた「道徳教育の充実に関する懇談会」第九回会合の場。同懇談会は同日、「道徳は検定教科書と評価を導入する特別教科に」とする報告書の骨子案を公表したが、鳥居氏はその懇談会の座長である。

 戦前・戦中の筆頭教科「修身」が忠君愛国思想で子どもを教化し戦場に送った反省から、戦後は「修身」を廃止。旧文部省の学習指導要領改訂(一九五八年)で小中学校に「道徳の時間」が設けられたが、道徳は「教科」ではなかった。五八年指導要領は“愛国心”教育についても「往々にして民族的偏見や排他的感情につらなりやすい」と否定的に記述していた。

 だが六九年改訂時、「日本人としての自覚をもって国を愛し、国家の発展に尽くす」などの文言が入り、以後、小学校三年生以上の指導要領に明記され続けている。

「修身」の復活をもくろむかのような発言をした鳥居氏は教育基本法改定(〇六年に“愛国心”を加筆)時の中央教育審議会会長であり、今回の会合で「法令遵守をもっと強調すべき」と発言をした銭谷眞美副座長(六四歳)も第一次安倍政権の文科事務次官。いずれも安倍首相らの意を受けた“政治登用”で同懇談会メンバーとなった。

 道徳の授業で児童らは活発に意見を出すが、そこに「評価」が導入されれば、本心とは違っても形だけ従順に振る舞う子どもが“大量生産”されかねない。そのとき「自己犠牲と我慢」という“指導”が持ち出される危険性がある。また、道徳教科書作成となれば、検定・採択の際に社会科同様、政治問題化は必至だが、年内の懇談会報告書確定を待ち、文科省は「結論ありき」の中教審諮問に歩を進める見通しだ(関連記事39頁)。

(永野厚男・教育ライター、11月22日号)

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