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在日コリアン男性へのヘイト投稿した被告に賠償命令判決 「差別的言動」と認定

2025年5月2日6:23PM

 高校時代の同級生がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のX(旧ツイッター)に執拗に書き込んだヘイト投稿により差別され名誉が傷つけられたとして、東京・杉並区の在日コリアン3世である金正則さん(70歳)がヘイト投稿をした福岡市在住の男性に損害賠償を求めた訴訟(※)で東京地裁(衣斐瑞穂裁判官)は3月18日、金さんの訴えを認め、請求通り110万円の賠償をこの男性に命じる判決を下した。

判決を受けて「在日の金くん裁判 勝訴」を掲げる原告の金正則さん(中央)。(撮影/佐藤和雄)

 金さんは、この男性による15件の投稿を「差別的言動」として訴えた。一方、被告の男性側は「不適切な投稿はあったとしても、本件各投稿を『差別的言動』とまでは評価することはできない」などと反論していた。

 判決は「各投稿はいずれも原告に対する不法行為を構成する」と認定したうえで、①これらの投稿が約2年10カ月間で断続的に行なわれ、その回数が相当程度に及んでいる、②ヘイトスピーチ解消法第2条(左欄参照)の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」にあたるものが15件中9件あり、その内容が悪質であると評価せざるを得ない――との判断を示し、請求通りの損害賠償額を認めた。

 では「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、具体的にどのようなものか。その9件すべてをここで示す紙幅はないが、たとえば2021年6月12日の投稿は、次のような内容である。

「在日の金くん。コメントをお願いします。朝鮮人は明らかに性犯罪が多いですよね。何故ですか?知らんとは言わせない。理由を述べよ」

 この投稿について判決は「韓国又は北朝鮮出身者の犯罪性向がそれ以外の者と比較して高いなどと指摘して、韓国又は北朝鮮出身者一般に対する否定的評価ないし嫌悪感を表明するとともに、原告にも同様の傾向がある旨を示唆して原告を非難するものである。(中略)本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動するものであると認められる」ことからヘイトスピーチ解消法2条の「不当な差別的言動」にあたると認定した。

「三つの成果」を強調

 原告側は今回の判決の内容を高く評価している。神原元弁護士は判決後の記者会見で「三つの成果」を説明した。

 第一は、賠償金額が原告の請求通りの110万円となったこと。第二として「ヘイトスピーチ解消法2条に該当するヘイトスピーチであれば、民法上の不法行為である、という流れをこの判決は明快に示してくれた。いろいろな判決が積みあがる中でヘイトスピーチ解消法が実効的なものになってきた。ヘイトスピーチ解消法に命を吹き込む、実効性のあるものとする判決の流れを、ほぼこの判決が確立してくれたような素晴らしい判決だ」と評価した。

 さらに第三として「特定の人種、民族に所属していることを理由にしてあたかも犯罪傾向が高いかのような(言動は)ヘイトスピーチなんですよということを正面から認定してくれた。ヘイトスピーチであれば当然それは不法行為として賠償責任を負うということを正面から認定してくれた。僕らが望んでいた通りの判決だ」と述べた。

 原告の金さんは、これまでの取り組みを振り返りながら、こう語った。

「本当に想定していない結果で、びっくりしました。今、蔓延しているSNSに書き込みをしている人たちにも、この判決が響いてほしいと思います」

佐藤和雄・ジャーナリスト

※提訴については『週刊金曜日』2024年4月5日号で既報。

(『週刊金曜日』2025年3月28日号)

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