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鹿児島地裁、川内原発運転差し止め認めず 「私たちは次の福島事故の前の段階に
脱原発弁護団全国連絡会|2025年5月2日6:00PM
2月21日、鹿児島地方裁判所(窪田俊秀裁判長)は、川内原発1、2号機の運転の差し止め請求を棄却した。期日後、弁護士会館で、記者会見・報告集会が行なわれた。

中野宏典弁護士は、司法審査について、「1992年の伊方原発最高裁判決は、被告に立証責任を事実上負わせたが、その後司法判断は悪化の一途をたどり、2007年の浜岡原発静岡地裁判決、10年の島根原発松江地裁判決では、基準適合判断さえ出ていれば安全が認められて、原告に立証責任を負わせていた。11年の福島原発事故後、この反省から、行政任せではなく、裁判所がしっかり判断しなければならないという覚悟・決意が表れた判決が出された。しかし、次第に裁判官が自分で考えることを放棄して、行政が適切にやってくれているはずだという福島事故前と全く同じ安全神話に陥っている。この判決は、原発の安全は社会通念を基準とするしかない、規制委員会には見識の高い専門家がいるので、その規制委員会が策定した基準は、社会通念を具現化しているから適合すれば一応安全と推認できるという論理。これは浜岡や島根の判決に類似し、私たちは次の福島事故の前の段階にいると考えざるを得ない」と批判。
引き続き、火山について「川内原発はカルデラの巣窟に立地。最大の争点はカルデラ噴火に対して安全が確保されているのか。原発運用期間(核燃料、廃棄物が敷地に存在する期間、数百年の単位)にカルデラ噴火が起こらないことを立証できなければ安全といえないはず。巽好幸神戸大学名誉教授は、まさにこの科学的根拠が示せていない、やろうと思えばできる調査等もやっていないと証言。原告らは、巽教授以外にも多くの文献、危険を指摘する知見を提出した。にもかかわらず、被告の依拠している知見がありさえすれば合理的なんだという内容になっている。肝心の、安全の中身を審理しないに等しく、何のために証人尋問まで行なったのか」と憤った。
大毛裕貴弁護士は、「要は規制委員会の審査を通っているから安全だという結論ありきの判断。原告らの主張や論文に書かれた内容を意図的にねじまげて解釈し、むりやり原発を存続させる方向に持っていっている。たとえば、『原告らの主張は結局のところ、設計対応不可能の火山事象についてその発生可能性が完全に否定できない限り、原子炉施設の安全確保上これを想定すべきと解される』としているが、そんな主張はしていない。私たちの主張は、過去に火砕流が到達した地域においては、今後も火砕流が到達する可能性があるから、そこには原発を建ててはだめというもの。また、40年か50年の間に巨大噴火が発生する可能性は科学的に推定できると書いているが、そんなことを言ってる科学者は誰もいない。このような判決が科学に基づく公正な判断と言えるのか。原告の主張の論拠とした証拠、人証をほぼ引用しないまま、被告の提出した証拠でよいという、不公平な判決だ」と断じた。
工藤伸太郎弁護士は、「基準地震動が過小だとする原告の主張に対して、きちんと理由を示さずに退けている。たとえば、松田式による地震の規模の推定には膨大な誤差が含まれるという主張に対し、判決は、松田式は平均像だが、平均像をそのまま用いることを予定していない、松田式は有用である、としたものの、平均像である松田式からの大きな誤差をどのようにカバーするのか具体的に示していない」と述べた。
森永明子原告団長は、「長い闘いの一つの分岐点、途中だと思う。過剰に期待していたわけでもないので、すごい落胆とか怒りということもない。心折れずに続けていくことが相手にとっては嫌なことだと思うので、やめないということが一番だと思っています」と述べた。
森雅美弁護団長は「肩透かし判決。規制委員会が規則を作り、専門家が関与しているから安全。その論理ですべて原告の主張を退けている。多重防護の考え方を否定し、避難計画は事故が起こらないから必要ないと言い切っており、断じて許容できない」と述べた。住民らは3月5日に福岡高裁宮崎支部に控訴した。
(『週刊金曜日』2025年3月28日号)
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