〈地下鉄サリン事件から30年〉宇都宮健児
宇都宮健児・『週刊金曜日』編集委員|2025年5月2日5:51PM

地下鉄サリン事件が発生してから3月20日で30年となる。
地下鉄サリン事件は、オウム真理教の幹部らにより営団地下鉄(現・東京メトロ)の日比谷線、千代田線、丸ノ内線の3路線5本の列車にサリンが撒かれ、14人が死亡し、6000人以上の人が負傷するという前代未聞の無差別テロ事件であった。
負傷者の中には、30年経った今でも心的外傷後ストレス障害(PTSD)や後遺症で苦しむ負傷者も少なくない。
一方で、オウム真理教の後継団体である「Aleph」や「ひかりの輪」、「山田らの集団」などは新たな信者を獲得して活動を継続している。新たな信者は若い信者が多く、地下鉄サリン事件後に生まれた信者も少なくない。
私が理事長を務めているオウム真理教犯罪被害者支援機構は、オウム真理教破産事件の破産管財人から譲り受けた損害賠償請求債権に基づいて、Alephとひかりの輪に対して損害賠償請求を行なっている。このうち、ひかりの輪とは2009年7月に合意が成立し、ひかりの輪は支援機構に対し、賠償金を支払ってきている。
しかしながら、Alephとは話し合いや調停で合意を成立させることができなかったため、支援機構はAlephを被告として損害賠償請求訴訟を提起し、20年11月には約10億2500万円の賠償金の支払いを命じる判決が確定している。しかし、Alephは、賠償金の支払いを命じる判決が確定したのに賠償金の支払いに応じないばかりか、支援機構に対する賠償金の支払いを免れるために「悪質な資産隠し」を行なっている。
地下鉄サリン事件の被害者や被害者遺族の中には高齢となり亡くなる人も出てきている。支援機構としては、一刻も早くAlephから賠償金を回収して、被害者や被害者遺族に対し、配当を行ないたいと思っている。
3月15日東京都内の全電通労働会館2階ホールで、地下鉄サリン事件を風化させず再びこのような無差別テロ事件を発生させないために、地下鉄サリン事件被害者の会、オウム真理教犯罪被害者支援機構、オウム真理教被害対策弁護団が主催して「地下鉄サリン事件から30年の集い」が開かれた。
私も参加し、支援機構の理事長として開会の挨拶を行なった。
(『週刊金曜日』2025年3月28日号)