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映画『Black Box Diaries』伊藤詩織監督に聞く 「日本へのラブレター」届くと信じて

石橋 学・『神奈川新聞』川崎総局編集委員|2025年4月3日6:10PM

次の世代のために語ることを決めた

──オスカーを獲った『ノー・アザー・ランド』のバーセル・アドラー監督とも話をしました。

 今回ノミネートされた5作品うち『ノー・アザー・ランド』を含めた4作品に監督自身が出演しています。その人でしか、その地域でしか撮れない、その人だから伝えられるストーリーに光が当たり始めていると感じます。

 パレスチナ人のバーセル監督とは当事者が監督してプロモーションする痛みについて語り合いました。映画が評価される一方、帰るべきホームでは苦難が続き、話すことさえ難しいというギャップが広がっていくばかりだと。それでも彼は、娘が新しく生まれ、この子のためにも未来を少しでも良くしていきたいと語っていました。一人の人間として、大人として次の世代に何ができるのか、真摯に考える姿勢に感銘を受けました。

『Black Box Diaries』から。(©Black Box Diaries)

──自身の思いと重なりますね。

 被害を受けた後、最初に会ったのは妹でした。当時高校生で、事件のことを知らない無邪気な姿を見て、沈黙したまま彼女に同じことが起きたら私は自分を一生許せないだろうと思いました。彼女や次の世代のために語っていこうと決めました。

 繰り返さないためには議論を始めていく必要があります。そのためにこの映画をつくりました。「日本の恥をさらすな」という批判がつきまといますが、日本にいる家族や友人たちが大好きだからこそ、私に起きたことを伝えたい。私にとっては日本へのラブレターなのです。

──日本で公開するにあたって許諾の問題が指摘されています。

 西廣陽子弁護士と電話でやり取りしている場面については確認が抜け落ちたことを謝罪し、昨年7月に削除を提案しました。映像使用の許諾が取れていなかった人についてもお詫びし、個人が特定できないよう最新バージョンで対処しています。海外上映についても差し替えるなど、できる限り対応していきます。

 日本で皆さんに観てほしい。観れば伝えたかったことが分かってもらえると信じています。日本での公開にたどり着けることを願っています。

聞き手 石橋 学・『神奈川新聞』川崎総局編集委員。共著に『「帰れ」ではなく「ともに」 川崎「祖国へ帰れは差別」裁判とわたしたち』(大月書店)、『ヘイトデモをとめた街 川崎・桜本の人びと』(現代思潮新社)。

(『週刊金曜日』2025年3月21日号)

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