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選択的夫婦別姓求める動き続く 
経済6団体が法改正要望

岩上喜多・ライター、宮本有紀・編集部|2024年4月1日8:33PM

 国際女性デーの3月8日、日本経済団体連合会(経団連)や新経済連盟(新経連)、経済同友会、選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会、全国女性税理士連盟、日本跡取り娘共育協会の6団体が選択的夫婦別姓制度の早期実現を要望。法務省や外務省、首相官邸などに対して、同制度を定める法改正の要望書や経営者らによる1000筆超の署名を手渡した。

院内集会で、経済団体らの要望書を受け取る矢田稚子首相補佐官ら。(撮影/岩上喜多)

 その後、参議院議員会館で行なわれた集会には、前出の6団体から13人と矢田稚子内閣総理大臣補佐官、古賀友一郎内閣府大臣政務官が登壇。法改正の要望書を受け取った矢田補佐官は「ビジネス界でこれだけの声が上がったのは画期的。みんなと一緒に大きな変革点を迎えたい」と述べた。

 株式会社KADOKAWA社長の夏野剛氏は「誰が反対しているのか。自民党の議員もほとんどは選択的だからいいのではないかと言っている。一部の非常に偏った思い込みを持っている議員の声が大きく、かみつかれるのが嫌だから、(別姓の)賛成議員が意見を言わない状況になっている。放っておくべき問題ではない」と厳しい発言。新経連理事の井上高志氏も「50年以上もずっと『変えてくれ』と国民が言っているにもかかわらず、なぜダメなのか。その説明責任を問いたい」と述べた。

「第3次別姓訴訟」提起

 同じく3月8日、選択的夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は憲法違反だとして30~60代の男女12人が東京と札幌の2地裁で国を提訴。双方が姓を維持したまま結婚できる地位の確認や法改正をしてこなかったことで受けた不利益に対する損害賠償などを求めている(詳細は『週刊金曜日』3月8日号で掲載)。

 選択的夫婦別姓を求める集団訴訟はこれで3回目で、今回の原告は北海道、長野県、東京都の事実婚夫妻5組と法律婚夫妻1組。原告と弁護団は提訴後に東京都内で記者会見し、口々に思いを語った。

提訴後に記者会見する原告と弁護団。(撮影/宮本有紀)

 事実婚17年の黒川とう子さん、根津充さん(双方仮名)は「家事も育児も半分ずつ分担し娘を育ててきたが、僕には親権がない」(根津さん)、「法定相続人になれず、手術の同意ができるか定かではないなど不安があり、薄氷を踏む思いで生活している」(黒川さん)など法的に守られていない不具合を感じている。根津さんは「どちらかが姓を放棄しなければ結婚できない理不尽な制約を憲法が許すはずはないと思う」と話した。

 北海道の原告はオンラインで参加。佐藤万奈さんは「夫婦別姓だと家族の絆が壊れるという人がいるが、私たちは別姓が選べないせいで絆が壊れかけた」と明かす。一度法律婚をして夫の姓になるが、ストレスと喪失感から体調を崩して退職。ペーパー離婚で自分の姓を取り戻すが、「姓を変えてほしいと言われたことを恨んでいる」と夫に告げることになったからだ。夫の西清孝さんが「改姓する側としない側で不平等が必ず生じる制度」と述べた通り、現在約95%は女性が改姓し実質的に平等ではない。

 女性差別根絶を目指す国際女性デーに提訴したのも「男女不平等を再生産する同姓制度」(寺原真希子弁護団長)を変える志ゆえだ。

 政府は仕事上・生活上の不都合を旧姓併記で対応しようとしてきたが、宇宙機関の技術系職員で、論文を発表してきた新田久美さん(仮名)は「国外では通用しない」という。「NASAなどの施設はパスポートと同じ戸籍名でしかIDを出さない。海外のセキュリティは厳しい。旧姓で仕事しようと思うと証明に時間がかかる。あきらめて海外では戸籍名を使おうとすると、今度は旧姓との同一性を証明するのに大変な時間がかかる」と体験を話し「経済的損失がとても大きい」と指摘した。

 子どもの出産の度に3回婚姻と離婚を繰り返して現在は事実婚の小池幸夫さんは「選択的夫婦別姓になることで不幸になる人は一人もいない。勝訴を希望しているが、今日にでも国会が動いて法改正してほしい」と訴えた。

 経済界からも、そして国連からも導入を求められている選択的夫婦別姓。裁判所の判断のみならず国会の対応が注目されている。

(『週刊金曜日』2024年3月22日号)

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