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大津地裁、福井7基の運転差止訴訟 
原告側証人「基準地震動は過小評価」

瓜生昌弘・福井原発訴訟〔滋賀〕を支える会事務局長|2024年2月2日7:21PM

 福井県の関西電力原発7基(美浜3、大飯3・4、高浜1~4)の運転差し止めを求めた裁判の第39回口頭弁論が2023年12月7日午後、大津地裁(池田聡介裁判長)であり、本訴訟最大の争点である基準地震動に直結する原発地盤評価の問題について、元京都大学防災研究所の赤松純平氏の原告側主尋問が行なわれた。

期日後の記者会見を兼ねた報告集会で話す赤松純平氏(左)と井戸謙一弁護士。滋賀弁護士会館にて。(撮影/瓜生昌弘)

 赤松純平氏は、応用地震学を専門領域とする研究者であり、基準地震動算定に用いられる入倉・三宅式の入倉孝次郎氏と京大防災研では、教授と助教授の関係にあり、同じ研究分野を担当していた。さらに、各地の原発の地盤調査にも参画しており、理論と実践の両面においてこの分野の証人として最適任者であると言える。

 赤松氏は、関電の測定データ解釈の問題点を指摘。それは赤松氏が独自に解析したものも含まれており、以下のように基準地震動算定のための地盤モデルについての問題を提示して、甘い地盤評価で基準地震動が過少となっているとするとともに、基礎地盤のすべり安定性の問題を証言した。

①関電は、地盤は「ほぼ均質」「特異な構造は見られない」「地下構造は水平方向に連続的」として、地震波の特異な増幅等はないとしているが、鉛直方向の地震波の速度分布の結果から、均質とは言えないこと、地震動の増幅が起こる基盤岩沈降域があることなどを無視している。

②地震波の減衰について、周波数5Hz以下の地震波は増幅され、5Hz以上では減衰するとし、中央防災会議の考え方と比べてとくに高周波数領域で大きく過小評価となっている。若狭地域の地震の特徴は、原発のような剛構造の建築物への影響が大きい高周波成分が卓越しているが、この指摘のとおり関電はこのことを考慮していない。

③地盤の地震波の増幅率について精査したところ、各原発で多少の差はあるが、関電の地盤モデルに比べて数十%以上、特に10Hz以上の高周波数領域では数倍以上となる等、基準地震動が過小評価となっている。

④基礎地盤の地震力に対するすべり安定性について、地盤の強度を大きめに評価していることをはじめ、地盤の異方性(方向によって物理特性が異なること)、不均質性、不連続性などが適切に考慮されておらず、審査ガイドの要請を満足していない。

 弁論終了後の報告集会で井戸謙一弁護団長は、関電がどんな反対尋問をするかにもよるが、この証言内容に対して裁判所も棄却できないだろう、そういう意味では、この裁判の結論に直結する重要な証言をいただいたと思っていると述べた。

 次回3月21日の期日は、180分の関電反対尋問の後、原告側再主尋問と裁判所の補充尋問が予定され、午前11時開廷とされた。

(『週刊金曜日』2024年1月26日号)

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