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美浜原発仮処分 
福井地裁と大阪高裁の審理終結

脱原発弁護団全国連絡会|2023年12月22日1:43PM

 美浜原発3号機は活断層に囲まれ、運転開始47年を超える老朽原発である。

 このような危険な原発の再稼働を許してはならないと、2021年6月に大阪地裁に9人が美浜原発の差止仮処分を申請。昨年12月の却下決定に対して即時抗告を申し立てた。

強風の中、入廷行進する弁護団、申立人、支援者ら(12月12日、福井地裁前)

 他方、この負けを受けて、福井の住民ら10人も地元の福井地裁に新たに仮処分を申し立てた(本年1月27日号参照)。それぞれの主な争点は、①地震による原発の危険、②避難計画の不備。①のうち、震源が原発の敷地に極めて近い場合について、新規制基準では特別の規定を定めているが、美浜3号機は、震源にごく近い原発であるのに、そのことを検討することなく許可処分がなされているというのが住民側の主張である。関電はこの規定をめぐる議論に独自の主張を繰り返している。

 12月12日15時から福井地裁(加藤靖裁判長)で第5回審尋期日が開かれた。前回11月7日の審尋期日では、双方が裁判所に対してそれぞれの主張をプレゼンした。この日は、その後双方の提出した書面を確認した後、今後の反論書面は来年1月19日までに提出し、3月末までに決定を出すこと、決定の1週間前まえに連絡する旨を述べて終了した。

 期日後の報告集会で、弁護団共同代表の井戸謙一弁護士より、審尋期日で興味深かった点について「仮処分では、申立人側に美浜原発差し止めを求める権利があること(被保全権利)、及び、本案の確定判決を待たずに差し止めを求める必要があること(保全の必要性)が要件である。本件でもほとんど①について審理しているが、関電は②について、広島地裁21年11月4日決定を引き、住民側は大地震が切迫していることを主張立証すべきという趣旨の主張をした。これに対して、裁判所は、いつ、どこで起こるかわからない地震について、明日にでも地震が起こるという主張立証を債権者に求めることはしないし、議論の対象にもしないと常識的な考えを示した。この仮処分の結論についてもこのような常識的な判断を期待したい」と述べた。

 翌13日には、大阪高裁(長谷川浩二裁判長)で、第6回審尋期日が開かれ、当事者双方からプレゼン資料を用いた口頭説明があり、抗告人(住民)側は、①老朽化原発の抱える問題、②地震の危険性、③震源近傍の活断層、④過酷事故時に避難できないこと等について説明。いくつか裁判所から質問を受け、審理は終結した。追加の書面は来年1月22日までに提出、決定は3月に行なう。

 期日後の記者会見では、裁判所からの質問に関心が集まった。井戸弁護士は、「双方のプレゼン後、主任裁判官から双方に質問があった。抗告人側に対しては、原発のトラブルの発生件数がバスタブ曲線(稼働した直後はトラブルが多く、時間経過すると安定し、老朽化すると件数が増える)を描く旨の説明をしたが、美浜3号機はどの段階かという質問、相手方(関電)に対しては、本件原発は震源ごく近傍に当たらないとのことだが、少なくとも1キロメートルなんだから検討対象にはなるでしょう。検討した上で当たらないと判断したのか、およそ当たらないとして、全然検討していないのかという質問だった。これに対して、関電は次回書面で述べると答えたが、裁判長は今日で審尋が終わるのだから、わかる範囲でと迫った」と述べた。

 この点について、共同代表の河合弘之弁護士は、「関電の代理人が答えられないこと自体おかしいが、5分くらい、うーあーと文字通り詰まった場面だった。関電は、敷地ごく近傍に当たらないと百万言を弄(ろう)している。にもかかわらず裁判所が再稼働に当たって、そういう検討をしたんですかと質問したのは、再稼働の許可申請のために検討しているのか、裁判が起きた後に言っている後講釈であるかを問う核心を突いた質問だった。

 弁護士なら、申請時に検討したと言えないとおかしいけど、言えない。裁判所は、これは後からの屁理屈だなと考えたのではないか。僕らが面白いなと思ったのはそこ。事によるとという気がちょっとある。もっとも、裁判官は負かすときにそういうポーズをとることもあるが、少なくともおざなりではない」。

 裁判所の判断に期待したい。

(『週刊金曜日』2023年12月22日号)

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