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神戸市王子公園を関西学院大学に売却する計画に市民が反対パレード

粟野仁雄・ジャーナリスト|2023年12月21日3:48PM

 神戸市が王子公園(灘区)を「公募」と称して事実上、関西学院大学(西宮市。以下、関学)に売却しようとしている問題(本誌9月8日号で既報)で11月18日、誰もが入れる市民の公園を一私立大学に売り飛ばしていいのかと反対する市民が「こわすな!王子公園 市民パレード」を敢行した。

11月18日、神戸・三宮のアーケード下を行くパレード参加者たち。(提供/金丸正樹)

 主催は「王子公園・市民ミーティング実行委員会」(小林るみ子代表)と「みんなの王子公園&動物園の会」(坂口美紀代表代行)。この日は風が強かったが約150人が三宮の旧花時計前広場に集結。出発前には堀口清志さん(灘区在住)が「市は大学が公益だと言っているが地域住民を犠牲にした公益などありえない。大学はいらない」と訴えたほか、矢谷トモヨシさんがギター演奏と歌で盛り上げた。一行は三宮センター街のアーケードを通り元町の神戸大丸店前近くまで「王子公園、動物園を壊さないで」「ペリカンも減らさないで」「神戸市は市民の声を聴け」などと声を上げて行進した。

 神戸市は今年11月に人口が150万人を切った。そんな中、若年定住、交流人口の増加を名目にしたのがこの大学誘致だ。市の計画では王子公園の4・2ヘクタールを都市公園台帳から外し、約3・5ヘクタールを約100億円で大学に売却、約0・7ヘクタールを立体駐車場にする。それだけではない。キャンパスの位置の陸上競技場が移転、再建され、プールや相撲場、テニスコートなどは廃止や縮小。歴史ある登山研修所も移転させ、名物だった桜などが大量に伐採される。市の計画案には「賑わいの創出」「国際性」「多様性」など歯の浮くような抽象的な言葉が並べられるだけだ。

 神戸市は「学生が増えて商店街などが潤い、年間の経済総合効果約116億円になる」などと皮算用しているが、経済効果があれば市民のための憩いの緑は消えてもいいという考えでしかない。そんな同市の久元喜造市長が最近「里山」をテーマにした講演をしていたから笑ってしまう。同市は12月5日から19日までの2週間、基本計画案を市民に縦覧し、意見を聞いて最終案にしていく算段だというが、市民の意見を職員が直接聞くような場はこれまで設けていない。

 前記実行委員会の金丸正樹事務局長は「来年2月に市議会で開かれる都市計画審議会がヤマ場になります。ここで市が王子公園を都市公園法の対象から外してしまおうとしている動きを止めなくてはならない」と警戒する。

大阪でも公園の民営化が

 大学誘致で町おこしをしたい過疎地ならともかく、神戸市のような大都会にある貴重な少ない緑を突然、大学誘致のための場に変えてしまうとは不自然極まりない。

 久元市長が突然「王子公園を大学の公募の場にする。大学の立地は計り知れないメリット、効果がある」などと言い出したのは2年前。公募したとはいえ、どの大学も手を挙げなかったらどうするつもりだったのか。次々とさまざまな建設が計画されていたことから見ても、「唯一公募に手を挙げた」ことになっている関学と裏取引があったとみるのが自然だろう。

 大阪市でも大阪城公園に観光施設や娯楽施設が建てられ、樹木が大量伐採されている。天王寺公園にも「てんしば」と称して喫茶店やレストランなどが並び出した。大阪市では公園の民営化と称して近鉄に管理をさせているが、管理を任された民間企業が金儲けを考えないわけがない。結果的に市民の共有財産のはずなのに、市民が金を払わなければ入れないという公園へと次々に変えられている。

 金丸氏は「来年1月28日には神宮外苑の再開発や樹木伐採に反対しているロッシェル・カップさん(東京都に対する行政訴訟の原告団長)をゲストに迎えて大きな反対集会を神戸で開きます。彼女は昨年、王子公園を見に来てくれている。集会などを盛り上げて市民の宝である王子公園を守りたい」と話している。市民の公園を私立大学に売却するようなことを許せば、都市公園は今後、首長の都合で次々と金儲けの場に変えられてしまうだろう。

(『週刊金曜日』2023年12月15日号)

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