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芥川賞作家の市川沙央さんがペンクラブシンポで「読書バリアフリー」の重要性強調

長岡義幸・フリーランス記者|2023年12月5日7:23PM

 日本ペンクラブ・言論表現委員会は11月20日、「読書バリアフリーとは何か――読書を取り巻く『壁』を壊すために」と題し、重度の障害がある女性を主人公にした小説『ハンチバック』で芥川賞を受賞した市川沙央さんと日本ペンクラブ会長の桐野夏生さんとの対談、日本文藝家協会副理事長の三田誠広さんらのシンポジウムを同ペンクラブ会議室(東京・中央区)で開いた。市川さんが「読書バリアフリーを進めてほしい。読みたい本を読めないのは権利侵害」と訴えていたことを受け、ペンクラブが文藝家協会とともにバリアフリーに向けた取り組みを進めるために企画したものだ(※)。

シンポジウムはYouTube上で開催。市川沙央さん(左)はオンラインで参加した。(YouTube画面より)

 対談で市川さんは、大学時代、誰にも開かれているはずの図書館が貧弱な障害者対応だったという気づきが問題意識の始まりだったと振り返って「電子書籍は欧米で先行したが、日本はアレルギーがあって進まないようだった。私にとって電子書籍は福音。読むのが楽になった」と発言。作家らの中には書店を守るため電子化に応じない人もいるという話を聞いてショックを受けたと訴えた。

 桐野さんは「私どもは無知で傲慢な作家だったのかなと思った。紙の本が好きだと公言してきたのを反省している。加害者の側にいたことに無自覚だった」と話した。

 他方、市川さんは紙か電子かに限らず「“萌え”に馴染んできた。二次元規制には警戒感がある」と表明。桐野さんは電子化で差別的な言葉が排除されたり、犯罪的性的指向が省かれたり、平板な表現になっていると語り「コンプライアンスによる締めつけが起きてくるのではないかとの危惧がある」とネット流通の問題を指摘した。

 市川さんも「上から締めつけることは文化にいい影響を及ぼさない。バリアフリーの訴えは文化的活動。出版社や作家が主導権を持って能動的に読書バリアフリーに動いてもらいたい」と応じた。

※シンポジウムの模様は現在もYouTubeで公開中。
https://www.youtube.com/live/bQq1FQ9ynAY?si=E-mUso0-JTOkuW0p

(『週刊金曜日』2023年12月1日号)

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