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女性や若者、性的少数者が参画しやすい選挙とは

神原里佳・ライター|2023年11月6日6:53PM

 今年4月の統一地方選挙では、女性候補者の当選が過去最高の約20%となり、ジェンダー平等実現への期待が高まる結果となった。とはいえ、全国には女性議員がゼロ、または1人しかいない地方議会も多く、政治分野のジェンダーギャップはいまだ大きい。統一地方選から半年を経た10月21日、「選挙改革フォーラム 新しい選挙のしくみを!」(主催:選挙改革フォーラム)が東京都内の会場とオンラインで開催され、当選した女性議員らが選挙活動を振り返るトークセッションを行なった。

登壇した(右から)水口かずえ、てらだはるか、鈴木ちひろ各議員。(撮影/西東旅人)

 弁護士で元自治省選挙部長の片木淳氏は、日本の選挙制度には三つの問題点があるとし、「一つは小選挙区制度。死票が生じ、民意が反映できない。年齢や性別など有権者構成に応じた議員構成に近づけるため、比例代表制中心にすべき。二つ目は選挙権と被選挙権の年齢が揃っていないこと。一律に18歳以上にしなければ若者が政治に参画できない。三つ目が、規制だらけの公職選挙法(以下、公選法)。選挙運動期間が区市議会議員選挙と区市長選挙は7日間と短すぎるし、文書の掲示や配布、演説会の方法、戸別訪問など細かい規定や禁止事項が多すぎる。供託金が高額なため立候補できない人も多い」と指摘。「こうした規制は市民の政治参画を阻害するもの。現行の公選法は表現の自由や国民主権の原理にも反しており、憲法違反。主権者である市民の理念に立って、自由で楽しい選挙ができる『新しい市民選挙』の実現を目指したい」と訴えた。

 トークセッションには1期目、2期目の3人の女性地方議会議員が登場し、選挙の現場のリアルな話が次々と飛び出した。

 杉並区議会議員として初当選したてらだはるか氏(立憲民主党)は元保育士。現場の声を議会に届けたいと立候補したが、「まず選挙にものすごくお金がかかることに驚いた。貯金もなかったので大変だった。経費と環境のことを考えて車を使いたくないと思ったが、新人で支持者も少ない自分は広く車で周ることが必要と感じ、選挙カーを使った」と話した。

 国分寺市議会議員に初当選した鈴木ちひろ氏(無所属/緑の党グリーンズジャパン)も、環境や聴覚過敏者、育児中の人への配慮からできるだけ選挙カーを使わないようにし、レンタカーの電気自動車に小さなスピーカーのみ載せて移動したという。「心がけたのは、頑張らない『スロー選挙』。休憩時間をたくさんとり、夜も早めに切り上げた。誰でも無理なく選挙活動ができる姿を見せることで、若い世代や女性、性的マイノリティの人々が立候補しやすくなればいいと思った」と思いを語った。

理想は楽しい「選挙小屋」

 小平市議会議員の水口かずえ氏(無所属)は2期目の当選。「やはり、家庭があると女性は立候補しにくいのが現状。私の場合も、家は散らかり放題だが(笑)、幸い夫が反対や干渉をしないので議員や選挙活動ができている」と話し、自分らしい選挙スタイルに挑戦するてらだ、鈴木両氏に「頑張ってほしい」とエールを送った。

 3人共通のキーワードとして、「次世代への働きかけ」がある。てらだ氏は子どもでも読めるよう、区政の課題についてすべてひらがなで書いたチラシを作成。「子どもがチラシに興味を示し、それがきっかけで家族で政治の話ができたと言われ、嬉しかった」と話し、鈴木氏も「選挙に行かない人にこそ関心をもってほしいと思い、期間中、毎日カラフルでかわいい服を着て街頭に立った」と、それぞれに工夫し奮闘した経験を共有した。

 また、理想とする選挙活動として北欧の「選挙小屋」も話題にのぼった。選挙になると町に各政党の小屋が建ち、無料のコーヒーを飲みながら政治家と対話できるという取り組みだ。

 日本でも3月、東京・下北沢で選挙小屋をモデルにしたイベントが開催され、話題を呼んだ。鈴木氏は「カフェのようなゆったりした雰囲気の中で暮らしのことや悩みについて気軽に話せる、そんな場所が地域ごとにあるといいと思う。そして、駅前にたくさん面白そうなテントが建ってまるでお祭りみたいにわくわくする、そんな楽しい選挙にしたい。候補者が頭を下げてお願いするのではなく、『投票に行きたい』と思える選挙ができる仕組みを作っていきたい」と展望を語った。

(『週刊金曜日』2023年11月3日号)

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