カルテル株主代表訴訟、関電元社長ら12人を一斉提訴
「約3508億円を支払え」
脱原発弁護団全国連絡会|2023年10月30日6:42PM
10月12日、電力会社のカルテルに関し、関西電力、中部電力、中国電力、九州電力の個人株主で、長年、電力会社の総会で脱原発議案を提案する等の脱原発株主運動を続けてきた株主らが原告となり、取締役らの責任を追及する株主代表訴訟を各地地裁に一斉提訴した。
関電については、26人の株主らが原告となって役員ら12人を被告として大阪地裁に提訴。
会見で大河陽子弁護士は、カルテルを持ちかけた関電が、公取委に独占禁止法違反行為を申告し、課徴金が免除(課徴金減免制度〈リーニエンシー〉)された関電役員らの責任を問う訴訟であること、本年6月の株主からの提訴請求に対し、関電は役員岩根茂樹、森本孝、彌園豊一、稲田浩二の責任を認めながら、提訴するまでもないと通知してきたが、それではダメだと株主が立ち上がったと述べた。
被告役員らの任務懈怠(けたい)責任として、①カルテルに関与、②カルテルを看過黙認、③カルテルを防止すべき内部統制システム構築義務違反、④カルテル実施時期は、a金品受領問題等の社内調査結果を隠蔽(いんぺい)、b役員報酬補塡(ほてん)、c税金補塡d発注情報提供、発注約束に基づく高値発注、e新電力顧客情報不正閲覧等の不正時期と重なることを指摘。会社に対する損害について、カルテルにより、①公共団体からの入札指名停止、補助金交付停止、②高値で電気を購入させられた大口顧客、相対顧客、官公庁が被った損害に対する賠償債務、③社内調査費用3508億2600万円を請求したと訴状の概要を説明した。
株主の権利弁護団として数々のカルテル、談合の株主代表訴訟を担当した富田智和弁護士は、「かなり露骨に経営陣が関与している。あからさまで悪質性が高い、関与した4被告はもちろん、他の被告にもカルテルを認識しえたと思う。リーニエンシー自体は有益な制度であるが、はたして首謀者が一抜けを許していいのか、このような事態は予想されていなかったのではないか」と指摘した。
海渡雄一弁護士は、「悪事に引きずり込んだ本人が、バレそうになったから名乗り出て逃れ、悪事に巻き込まれた人に課徴金が課された。商道徳だけでなく、人間としての道徳、さらには悪者の倫理としても許されないのではないか」と断じた。
弁護団長の河合弘之弁護士は、福島原発事故の後は電力会社の横綱である関電が、自由競争で値下がった料金を元に戻そうと、各電力会社にカルテルを持ちかけ、地域独占の利益を消費者から吸い上げていたと指摘。2020年秋ごろ、外部から独禁法上問題となる行為があるとの密告があり、経営層とヤメ検弁護士も密接に関わり、結局、公取委に明らかになる前に自首して課徴金を免れ、他の電力会社は史上空前の課徴金を支払い、主犯の関電はゼロ、これは典型的なマッチポンプで許されないと述べた。
さらに、カルテルも原発再稼働と根っこは同じで、今だけ金だけ、自分の会社だけということが関電の体質であると指摘した。そして、役員らの責任を追及して、企業風土を改善させることで、汚い金や、悪事をしないと維持できない原発はやめようということにつながっていくと確信しているとした。
原告の滝沢厚子さんは、「関電はいいかげんにしてください、という気持ち。私は株主として、30年近く脱原発の提案をしてきた。原発マネー不正還流事件が発覚してから『コンプラ』、『信頼できる企業』という言葉が躍っているが、同時期に税金補塡、報酬補塡、カルテルをやっていた。関電につぶれてほしいというのではなく、電力会社としてよい企業になってほしい」と提訴した思いを述べた。
(『週刊金曜日』2023年10月27日号)