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「私のからだは私のもの!」 
SRHR実現目指し東京駅前でアクション

竪場勝司・ライター|2023年10月6日6:16PM

 9月26日の世界避妊デー、9月28日の国際セーフアボーションデー(安全な妊娠中絶のための権利の日)に合わせ、9月はSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ=性と生殖に関する健康と権利)に関するイベントが複数行なわれた。

スタンディングアクションに集まった大勢の参加者たち。(撮影/竪場勝司)

 長く女性たちが求めてきた経口中絶薬が4月に承認され、避妊の失敗や性暴力などによる望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬のOTC(医師の処方箋なしに薬局で購入できる)化も、試験的運用が決定。旧優生保護法下で不妊手術を強制された原告らが国を訴えた訴訟で勝訴するなど、今年はSRHRに関連して多くの動きがあった。とはいえ、経口中絶薬や緊急避妊薬へのアクセスは非常に限定的であり、性的マイノリティの権利や包括的性教育にはバッシングも激しいなど、課題は多い。

 そこで、SRHRに関連する活動をする団体が普段の活動の垣根を越えて連携。9月27日の夜、東京駅前の行幸通りで、ジェンダー平等とすべての人のSRHR実現を目指してスタンディングアクションを行なった。

 共催したのは、公益財団法人ジョイセフ、#なんでないのプロジェクト、SRHRユースアライアンス、SOSHIREN女(わたし)のからだから、一般社団法人Spring、LGBT法連合会、#もっと安全な中絶をアクション(ASAJ)の7団体で、平日夜にもかかわらず約130人が参加。集まった人たちが次々とマイクを握り、「中絶を犯罪としている、刑法の堕胎罪をなくし、配偶者同意を必要としている母体保護法を変えよう」「SRHRは人権の根幹」「私の体のことは私が決める」「経口中絶薬をもっとアクセスしやすい形で認可を」「性暴力は障害女性にとって深刻な課題で、たくさんの人が被害にあっている」などと口々に訴えた。トランスジェンダー女性に対するバッシングがひどくなっている状況について憂うる声も複数あった。

 司会を務めた#なんでないのプロジェクトの福田和子さんは、「SRHRの言葉を軸にたくさんの人が集まれたことはすごく意味がある。これからもみんなで進めていきましょう」と呼びかけた。

国連加盟国から36の勧告

 9月19日には、公益財団法人ジョイセフと#なんでないのプロジェクトが「なんて答えた日本政府!? UPR採択について語る、市民社会座談会」をオンライン開催した。UPRはすべての国連加盟国が4年半に一度、国内の人権状況について加盟国間で審査し合う「普遍的・定期的審査」のこと。ジョイセフなど国内外の9市民団体は、日本におけるジェンダーとSRHRに関する人権課題の共同報告書を国連に提出していた。

 今年1月に開催されたUPRでは、115の国連加盟国から300の人権改善勧告が日本に出された。このうち、24カ国からの36の勧告がSRHRに関連するものだった。しかし、その勧告に対し日本政府が「受け入れる・部分的に受け入れる」としたのは、「避妊薬(具)へのアクセス向上」「安全でタイムリーかつ安価な中絶医療へのアクセス」「(中絶の)配偶者の同意要件廃止」の三つのみ。

 共同報告書の執筆に加わった団体の一つ、「#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」の染矢明日香さんは、日本政府の回答を一定評価しつつ、「現実とのギャップがある」と指摘した。緊急避妊薬は、OTC化を求める市民団体などからの要望を受け、厚生労働省が2021年から検討会議を実施。22年末から23年初めに実施されたパブリックコメントでは4万6000件以上の意見が寄せられ、OTC化「賛成」が約98%と圧倒的多数を占めた。しかし結局は「試験的運用」が決まっただけで、結果が出て実用化するまでにはかなりの時間がかかる見込みだ。

 染矢さんは「試験的運用の調査対象は全国で約6万店ある薬局のうち最大で355店程度と言われており、これではアクセス改善にはつながらない」と批判。また、「世界で広がっている『包括的性教育』へのアクセスを求める勧告を『受け入れない』との政府回答にショックを受けた。性教育や情報提供の充実も含め、着実で早急な緊急避妊薬のOTC化をこれからも求めていきたい」と述べた。

(『週刊金曜日』2023年10月6日号)

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